能力か人か

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夢診療所34

その34)
「僕もこの時、これ以上彼女に触れたら、騒ぎが起きそうな気配を感じたのです。そこでそれ以上深入りするのは止めにしたのです」
「彼女に触れたいのは自然の心の動きですが、それを夢の中でも自制できるのは、Aさんの倫理性が向上して来た証でしょうねえ。若奥さんのイメージ自体が、あなたの想像のたま物でしょうが、彼女が拒否する仕草も、あなたの潜在意識が予測したものです。あなたは夢の世界でも、女性が拒否する場面を想定できるようになったということです」
「それは一体、良いことなんでしょうかねえ、悪いことなんでしょうかねえ」A氏は自分が進歩したのか、退歩したのか全く確信できなかった。
「私はAさんは進歩されてると思いますよ。潜在意識の中でも女性に触れることをセーブできるのは大したものですわ」
「はあ、そう言って頂けると嬉しいですね。しかし、驚いたのは性欲を処理した、その晩にもこうした夢を見るとは、男は心底いやらしいのですかねえ」A氏は困ったような面持ちだった。
「そうねえ、男の方はいやらしさの塊かも知れませんねえ。でも男性が女性に触れたいと思うことは、いやらしいことではないと思いますわ。性欲とスキンシップは全く次元が違うと思うのです。例えば我が子を抱きしめるのは性欲とは全く関係がありません。そこにいやらしさは存在しないのです。抱いたり、触ったりした結果、性欲が刺激されるかどうかが別れ道となるのです」
「そうですか。それを聞いて少し安心しました。スキンシップは自然な欲求と考えても良いのですね。触れる対象が我が子であったり、女性であったりすることにより全く趣が異なるって訳ですね」
「そう考えて頂ければ良いと思います。ですから性欲は全くなくてもスキンシップは有り得ると思って頂いて結構です」
「女性にとってもスキンシップは大事なようですが、性欲とは切り離して考えられてるのですか」A氏は女性の性欲に興味津々であった。
「私たちは女性同士でも手を握り合ったり、抱き合ったりして、スキンシップを大事にしています。女同士では会話の中でも、相手の腕や肩に手を置いたりすることが多いのです。それらはコミュニケーションの一種なので、性欲とは全く関係ありません。ですから会話をしながら男の方に身を寄せられたり、腕を触られても何ら不自然とは感じないものです。
 私たち女は全身に性感帯が張り巡らされています。ですから気に入った相手であれば、身体のどの部分を触られても快感なのです。たとえ満員電車で見ず知らずの男に身体をすり寄せられたとしても、それがあからさまな痴漢行為でなければ、理性とは裏腹に快感を感じてしまうこともあるくらいです」
 それを聞いてA氏はよだれを流さんばかりに、顔の筋肉を緩めた。
「え、先生でもそんな感情をお持ちですか。僕も何か勇気が湧いて来ました」
「はあ。私の話と勇気と何か関係があるのですか」心理士は彼の反応に納得できない様子だった。
「僕は女性がスキンシップに興味があることを知りたかっただけです。男はスキンシップより触ることだけに興味があります。男は触られたくはないのです。女性は納得すれば、触られることが嫌いでないことを聞いて一安心したのです」
「私たち女性は触れられることが基本的に好きです。ですが条件があります。好きなタイプの男性に触れられたいという条件です。それを世の男は勘違いしているのです。世の男の一部には、女性は誰からも触れられるのを好むと曲解している者がいるのは全く困りものです」彼女は深くため息をもらした。
「それは警告として受け止めましょう。相手の女性の意思を尊重するようにしましょう」A氏は納得したみたいだった。
「それではAさんもはめを外さないようにして下さいね」そう言いながら、彼女は機器を片付け始めた。
「ところで、Aさんの夢に故障した自転車が何故、出て来たのでしょうか」心理士は思い出したように尋ねた。
「それはですね。自転車のギアーを先日、一番軽い部分に設定した時に、チェーンが外れた経験をしたのです。さらに最近、早朝アルバイトをしようと考えている折に、自転車を通勤の足にもっと活用しようと頭を悩ませていたからです」A氏は立ち上がりながら、何かチャンスを窺っている風だった。
「そうだったのですか。今のお仕事の他に早朝の仕事をされるとは、Aさんもご苦労ですねえ。くれぐれもお身体に気をつけて下さい」彼女は帰りかけるA氏にねぎらいの一声をかけた。
 A氏はそのチャンスを見逃さなかった。振り向きざま、彼女の近くまで寄ると両手で彼女の右腕を優しく包み込んだ。二人はしばし無言のまま、視線を下に向けていた。彼女は握られた腕を振りほどく素振りも見せなかった。
 最後に彼はポツリと「有難うございます」と言いながら、右手だけを離しダンスでもするかのように、心理士の右肩をそっと右腕で包み込んだ。どの位の時間が流れたのだろうか。室内はすっかり夕闇の中に飲み込まれていた。
  35に続く

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子は親に反発する


子は親に反発する1

子供は親と同じ人生を歩む事は先ずない。子供は親を見て都合の良い所は模倣をするが、都合の悪い所は取り入れない。その辺りは実に合理的に割り切っている。従って親としては真似て欲しい所は子供に真似してもらえず、真似て欲しくない部分を真似されると言うことが良く起こる。
キリスト教の価値観はこの世的でない。親がキリスト教的であれば子は反対の路線を行くというのも真理である。キリスト教的な生活ははっきり言って貧しい。親は主義としてその貧し差を選択しているが、子供はその貧しさから抜け出したいと思っている。何故なら子供は素直なので忠実に肉の欲に従っている。そのため貧乏より金持ちが良いことを肌で感じている。社会に生きて自分に正直であれば、子供ながら貧乏より金持ちが良いと気づく。また金持ちの人から聞く話の方が実際、楽しそうではある。貧乏な人も心の平安を得ているかも知れないが、子供にとって心の平安と言った精神的な、眼に見えない部分の価値は把握しにくい。そこでどうしても彼らの関心は金持ちに向かうのである。

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