2022-01-21

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夢診療所29

その29)
モニターではひとしきり口論が続いた直後、A氏の妻が思い余ってベランダから庭に飛び降り、そこから隣の家の庭へ入り込み、何かを叫びながら向こうの路地へと入って行った。
「奥様、パニックを起こされたみたいですね。Aさん、あなた彼女を傷つけるようなことを何かおっしゃったのですか」
「僕も無我夢中だったので感情に任せて、何か酷い事を言ったようです。その内容までは残念ながら憶えていません。彼女は鋭く僕の言葉に反応しました。そして切れたようなのです」
「夢に出て来たような状況を実際に体験されたことがありそうですね」
「良くお分かりになりますね。さすがに先生ですね」
「いえ、あなたがモニターに見入る視線が真剣そのものなので、これは単に架空の話ではないと察した訳ですよ」
「全くその通りです。僕は過去に似たような体験をしたことがあるので、今回夢の中でも思わず『しまった、言い過ぎた』と思ってしまったほどです。僕が言い過ぎた結果とんでもないことになってしまったと後悔したのです。言い過ぎた時は常にそうなのですが、この時は特に強く感じました」
「どんな感じを持たれたのですか」
「この一言を言ったら取り返しのつかないことが起こると予感していたのです。それでも夢の中の僕はこらえ切れずに決定的な一言を言ってしまったのです」
モニター上には過去にA氏が妻に決定的な一言を言った場面が、次々と映し出されていた。それらの映像はまるで走馬灯のように走り去り、その度にA氏に後悔の念を呼び覚ますのだった。
「Aさん、あなた奥様に大分、攻撃的なことも言われたのですね」
「そうなんです。当時は様々な災難に襲われたもので、僕も家内も常にカリカリしてたのです。お互いの心を傷つけ合っていることに気づく余裕さえなかったのです」A氏は深くうなだれた。
モニターでは再び、夢の続きが再現されていた。一旦外に出て騒いでいた妻が室内に連れ戻されていた。近くにいた屈強そうな男が彼女の行く手を阻んでいた。彼女が外に出ようとすると、その男は彼女をその場に抑え込んだ。そこで夢は途切れた。
「その後、奥様がどうされたかは分からなかったのですね」心理士は心配そうだった。
「ええ、全く憶えておりません」A氏は深くため息をついた。二人の間には、しばし沈黙が流れた。
「いずれにせよ夢で良かったですね」
「はい、全くその通りです。僕は今の自分の中にも、彼女を未だ攻撃する気性が残っているのがショックだったのです。僕の中に眠る虎が、いつ目覚めるか不安になったのです」
「Aさん、それは心配されなくても宜しいと思いますよ。夢の中では確かにあなたは感情的になり、怒りを爆発させました。でもその直前にあなたの潜在意識が危機を予見していたことが重要なのです。潜在意識が自覚している限り、現実で夢のような出来事が起こるはずはないのです。夢の中の出来事は、単に失敗のシミュレーションである場合もあるのです。今回は失敗を目の当たりにすることで、潜在意識があなたに警告を発したものと思われます」
「はあ、それでは失敗を繰り返さないためには、家内に対する言葉遣いに注意すれば良いということになりますね」
「全くその通りです。夫婦円満が第一ですからね」心理士はそう言いながらも寂しそうな笑顔を見せた。
「どうも有難うございました」A氏は彼女を抱き寄せたくなる感情と必死で戦いながら、その場を後にした。
心理士は一人、夕闇迫る部屋の中で夫婦間の暖かい愛情を羨ましく感じ、結婚を夢見るのであった。
  30に続く

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虎の威を借る狐3

虎の威を借る狐3

高慢とは自分を過大評価している態度の表れである。自分の過大評価は過信につながる。そして過信には神の入り込む余地はない。自信を持つのは良いが、自分の能力を客観的に正確に評価する必要がある。緊急と言う状況、切羽詰まった状況では自己を過信する間違いを起こしやすい。精神的に追い詰められているのだ。時間的に追い詰められることが多い。時間がないと人は一時的にパニック状態に陥る。そして冷静な判断を下せなくなる。普段だと思いもかけない言動に出てしまう。
自分を過大に評価するとは知識や経験がない証拠である。知識や経験があれば私たちは慎重にならざるを得ない。何故なら数多くの失敗を経験しているので失敗の恐さを知っている。知ったかぶりほど恐いものはない。知っているつもりで大胆に行動すると失敗するケースが多い。そこには謙虚さが欠けていることが殆どだ。自我が強いと人に対して謙虚になれない。それは知らない事や経験不足が知られて自分が傷つくのが恐いからだ。自尊心により自己を人の非難からかばおうとしているのだ。

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