死にて死に勝つ

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夢診療所25

その25)
(私塾への思いと不安)
「こんにちは、今日は久々に夢の解析に来ました」
「そうですか、鮮明な夢だったのですねえ」
「朝、起きた時点で思い出せる夢は、その日一日ぐらいは頭に残っているものです」
「昨日はどんな夢を見られましたか」
「塾で教える夢です」
「では細かいお話しは心理士となさって下さい。奥へどうぞ」
受付嬢はA氏を廊下奥の緑の扉へと案内した。
「それでは中でお掛けになってお待ち下さい」
しばらくすると心理士が入室して来た。
「こんにちは、お待たせしました。今日はどうされましたか」
「あ、お世話になります。久々に夢を見ましたので、解析して頂きにまいりました」
「それでは、電極端子を接続しますので失礼します」心理士は電極をいくつかA氏の頭に貼り付け、解析器を調整した。
やがてモニターには子供たちが机を並べている部屋が映し出された。
「ここはどこなのですか」
「塾ですよ。しかも病院で管理している塾なんです」
「はあ、不思議な塾ですねえ」彼女は首をひねっていた。
「また僕の頭の中で現実と過去が複合されてしまったみたいです」
「ではここに登場されている女性、お二人はどなたですか」
「彼女たちは今の病院で係わりのある看護副部長と補佐です。ふたりは院内の教育に携わっている責任者なのです」
「すると、その辺りは現実の部分なのですね。では塾が過去の部分となりますね」彼女はさすがに鋭い。
「そうです。僕は以前、家で塾を開いておりました。その時の思いが未だ胸の内に残っているようなんです」
「それが現在の病院での人間関係と混ざってしまったのですね。一体、彼女たちはあなたに対しどのようなことを言われていたのですか」
「僕は直接、彼女たちから訴えを聞いた訳ではないんです。あくまで第三者を通じて、伝え聞いたのが気がかりなんです。僕が指導に対しても入塾に対しても積極的でないと言うのが彼女たちの言い分でした」
「そんな苦言を陰で言われていたのですか」心理士はムッとした表情で聞き返した。
「そうなんです。そのために子供たちの数は減り、教室が効率的に運営されていないと指摘されていたんです」
「それはひどい話ですが、あなたの側にそう言われる根拠は何かあったのですか」
「それほど身に覚えがあるとは思われないんですが、子供を教えることに対して消極的になっていたことは事実ですね。以前のように子供に教える熱意が、今では全く湧いて来ないんです」
「それなのに何故、塾が夢に出て来たのでしょうかねえ」彼女は理由が知りたかった。
「昨夜、上の子に古文の活用問題を出したことがきっかけとしか思われません」
「あ、確かにそれが原因らしいですね。お子さんの宿題に係わることが、あなたの塾で教えられていた記憶を呼び覚ましたのでしょう。あなたは塾の記憶を呼び覚まされても、そこで教えることは心の底で拒否されたのですね」
「じゃあ、看護部の二人はどう捉えれば良いのですか」
「彼女たちは日々の仕事の上で、あなたに係わることが多くなっているのでしょう。しかも彼女たちの裏で糸を引いている黒幕の存在が、あなたには気になっているのではないですか」
「え、良く分かりますね。僕は彼女たちとの係わりには、特に問題を感じてはいません。ただ、その裏で彼女たちを操っている黒い影に脅威を感じてはいます」
「その脅威が夢の中で、あなたに圧力を加えていたのでしょう。彼女たちがあなたの消極さを責めているような場面を作り出したのです」心理士はきっぱりと断定した。
「では黒い影の存在を明らかにし、具体的な対処を考えない限り、こうした夢は今後も見ることになりそうですね」
「それはそうかも知れませんね。あなたにとって、黒か白か分からない不可解な相手との係わり合いは、思ってもみなかった夢を見させることになるのです」
「今回はどのように解決したら良いのでしょう」
「塾について言えば、あなたは完全に塾で教える思いから断ち切れたと言えます。看護部の方たちとの関係は今後も用心された方が良いとの警告です。あまりあなたが彼女たちや裏に潜む悪の存在を見くびると、痛い目に遭うことがあると心得ておいた方が良いでしょう。安易な行動や判断で、あなたはいつ足をすくわれることがないとも限らないのです」
「はい、これからも彼女たちとの係わりには充分、注意してかかることにします。有難うございました」
 窓の外はすっかり暗くなり、遠い町のネオンが色とりどりに咲き始めていた。
  26に続く

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覚悟


覚悟

違う世界に行きたい欲求があっても覚悟がなければ一線を越えられない。抜け出したい世界に余程嫌気が差したか、或いは飛び込もうとする世界が余程魅力的かが起爆剤となっている。覚悟の最たるものは自殺である。この世に見切りをつけるほど追い詰められた結果である。タトゥーを入れるのも自殺ほどではないが覚悟がいる。
タトゥーでは世界は変えられないが自分を変える事は出来る。自分が変われば周りの世界からの目が変わり、結果的に住む世界が変わる。江戸時代にタトゥーは職業上必要であったが、現代ではアウトローを目指すファッションの一つである。注射にも恐怖感を抱く肉体的弱者にはタトゥーは論外だ。更に行動範囲を狭める危険を冒してまで不可逆の世界に飛び込む勇気もない。

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