夢解析器37

「こんにちは」A氏はゲッソリとした顔で訪れた。
「こんにちは、Aさん、お疲れの様子ですね。どうされましたか」受付嬢は気にかかった。
「はあ、今朝がた、うなされる夢を見たものですから少し疲れました」
「それは大変でしたね。それでは奥でごゆっくりお聞かせ下さい。どうぞ」
受付嬢はA氏を廊下奥の緑の扉へと導いた。
A氏はもうろうとした頭で窓の外の景色を眺めていた。暫くするとドアにノックがあり、心理士が入って来た。
「こんにちは、Aさん、お元気ですか」
「いや、それほど元気ではないです。寝不足のようです」
「それは一体どうされましたか」
「昨夜、寝たのは11時頃だったのですが、それ以降、何度か目が覚めてしまったのです。トイレに2度ほど起きましたし、寝た気がしなかったのです」
「お腹でもこわされたのですか。季節の変わり目なので気をつけて下さいね」
「はあ、有難うございます。昨夜は子供部屋に寝たんですが、上の息子が冷房をガンガンに効かせてましたので、腹が冷えたようです。しかも寝る前に枝豆を食べたのが良くなかったようです」
「枝豆は消化に悪いと聞きますからねえ」
心理士はそう言いながらも手早く機械のセッティングを済ませた。
モニターにはA氏の奥さんらしい人が部屋に入って来て皆を起こそうとしていた。
「僕の家内は夢の中で3時頃、部屋に入って来たんです。僕はそれが夢なのか、現実なのか、判然としないまま、声を上げようとしていました。ところが金縛りにあったように全く声が出せなかったのです。本当に僕は喉から声を絞り出すようにして、家内を部屋から追い出しました。夢の中で声を出すことは体力がいるもんだと分かりました。家内は気を悪くして部屋を出て行ってしまったのです」
モニターの画面は切り換わってどこかの宿泊施設が映し出された。A氏と同じ部屋には子供達が寝ていた。もう起きる時刻であった。
「現実的には今日、下の息子は社会科見学だったのです。そのため普段より早く起きる予定になっていました。上の子も学校があるので、いつも通り早く起きる筈だったのです。早起きさせねばとの緊張感が僕を神経質にさせてたのかも知れません」
「それで部屋を出られた奥さんはどうされていたのですか」
「僕は施設の建物をあちこち探し回ったのです。家内はなかなか見つかりませんでした。もしかしたら切れてしまって、どこか外へ行ってしまったことも考え合わせました。僕は受付で家内の部屋番号を確かめることができました。やっとその部屋で見つかったのです。彼女は秋田から来た友人と二人でいました。精神状態も落ち着いていたようでホッとしました」
「それは何事もなく良かったですね」
モニターでは画面が変わって、レストランか居酒屋で何人かで食事をしている様子が映し出された。小学校から知っている水津・長沼と会社時代に知り合った浜本がいた。
「彼らとは最近、ずっと会っていなかったんで久々に夢に出て来たようです」
「皆さん一万円ずつ支払っていたみたいですが、料理はそれほど出てないですね。そして料理を食べ終わらない内にまた皆さんで歩き始めましたね」
モニターにはデパ地下が映し出され、そこで誰かを探している様子だった。
「僕は誰かを追いかけていたのですが、誰であったのかは思い出せません」
「Aさんは下の息子さんと連れられているようですねえ」
「はい、僕は彼の手を引いたり、抱っこをしたりしていました」
「お子さんは未だに甘えられるのですか」
「はい、小学校5年なのに良く甘えます。それでいて学校ではしっかりしているのです。僕も家内も彼には後、2、3年甘えてほしいなあと思っていますが、どうなるか分かりません」
「夢が叶うと良いですねえ」心理士はうらやましそうであった。

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