良太の冒険6

その6)
(星野冴子)
今日は憧れの星野冴子の家で「お化け話し会」が開かれる日だ。良太も呼ばれていた。彼は朝からワクワクしていた。彼女は転校して来て、未だ1ヶ月にもならないがクラスの人気者だった。
良太はある意味で恵まれていた。女子の転校生が来ると必ずと言って良い程、初めに彼の隣の席に座るのだ。席順は担任の足立教諭が決めていたので、そこには何らかの意図があったのかも知れない。良太があまりにも手に負えない生徒だったので、転校生と同じ席にすれば、慣れるまでは静かにしているだろうとの配慮だったのだろう。机は二人掛けで横長だった。
「君の家はどこらへん」と良太は冴子に恐る恐る尋ねた。彼は人見知りをするので初めての女の子にはなかなか話ができなかった。
「あたしの家は小学校と中学校の間の道を真っ直ぐ行って、角を右に曲がった5軒目よ」と彼女はごく、あっさりと答えた。
「だったら菅沼と菅谷の家の近くかあ」と、その辺りの地理に詳しい良太は、彼女の家を見た覚えがあった。
菅谷もこの春に転校して来たばかりの女の子だった。星野冴子がやせ型なのに対して、菅谷のり子は丸ポチャだった。デブとまでは行かなかったが、ヤセ・デブコンビで菅谷と星野は初めから仲が良かった。
この「お化け話し会」も二人が発案したものだった。夏休みにもほど近い、暑い日が続く最中、気分だけでも涼しくなろうとしたのだ。
「冴子んちの二階って広いよね。7~8人ぐらいだったら座れるかな」と菅谷は切り出した。
「え、うちで何かする気なの」と、いつも突拍子もないことを言い出す、のり子に冴子は警戒した。
「実はね、皆で集まって、怖い話しでもしようかなって考えてるの。どう乗らない」と菅谷は、いたずらっぽい目つきをした。
「うん、乗っても良いけど来る人いるの」
「大丈夫よ、もう目ぼしい人には声かけたわ。みんな興味がありそうよ」と行動派の菅谷は手回しが早い。
「相変わらず手早いのね。で、のり子、本当の目的は何なの」と星野は、裏に何かあると直感していた。
「別に何もないわよ。あまりに暑いから涼しくなりたいだけよ」と菅谷はお茶を濁した。
「私にはちゃんと分かってんのよ。山口君が目的なんでしょ」と星野はズバリ目当てを言った。
「いえ、それは偶々そうなっただけよ。成行きよ」とさかんにごまかしている。
「いいのよ、あたしだって彼には興味があるんだから」と星野もまんざらではなさそうだった。
山口も転校生の一人だった。良太にとっては口惜しいことだったが、男にしろ女にしろ、転校生は質が高かった。女であれば可愛い子が多く、男であれば恰好良い子が多かった。今までいた在校生は誰もが、転校生の前では不思議とくすんで見えた。
7に続く

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ラブドール

とても良い
by ラブドール (2021-09-04 09:16) 

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