路地裏の同窓会

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夢診療所19

その19)
「僕は今、病院勤めをしています。職種は用度と言って物品管理部門です。仕事には特に不満はないのですが、給与が低いのです。入職当時から全く年収が上がってません。下がる一方なのです。この冬にはさらにボーナスがカットされそうなんです」彼の表情は沈痛なものとなって来た。
「それはどうしてですか」
「病院の売り上げが下降しているからです。最近、ご存知のように診療報酬改定が行われました。その結果、大きな痛手を受けたのがうちの病院のような療養型病院なのです。入院費がこれまでより半減するのです」
「それは大きいですね」
「収入減を補うには支出を切り詰めねばなりません。そのため夏のボーナスが大分カットされました。人件費の比率が高過ぎるのです」
「どの位の高さですか」
「70%以上もあるのです。異常な高さです。人件費カットはやむを得ないとしても、その仕方が許せないのです。管理職や医師は年俸が決まっていて変化しないので安泰です。僕ら下っ端だけがボーナスカットされるのです」A氏は悔しさでこぶしを握りしめた。
「Aさんの怒りは良く分かりますよ」心理士は盛んにうなずいていた。
「今だって月々、赤字の家計でボーナス時期にやっと補填している有様です。二人の息子も大きくなり、教育費がかさむ年頃になりました。益々家計が苦しいのです。その中でボーナスのカットは死を宣告されるのと等しいのです」
「まあ余り思い詰めないようになさって下さい。心を楽にするために、この研究所へいらしている訳ですからね」
「そうですよ、先生。何とかして下さいよ。僕は一体どうすれば良いんですか。給料の減りを補おうとアルバイトの道も探したんですが、今は不景気で運送会社の早朝仕分けも断られました。一攫千金を狙おうと文章を書いて応募してるんですが、結果発表はずっと先のことです。僕は今すぐにでも現金が欲しいんですよ」
「かなり切羽詰っておられますね」
「そうですよ。もう銀行預金だって底をついてしまっているし、最後の手段は学資保険から前借りするしかないのです。でも今、多額に借りてしまうと将来、子供たちが進学する際には入学金も払えないほどに不足してしまうんです。僕はどうしたら良いか分からない」A氏は頭をかきむしっていた。
「Aさん、あまりふけを飛ばさないで下さいよ」
「あ、はい申し訳ありません。つい不安が高まってしまったもんですから」
「あなたの金銭的不安の象徴が巨大な立方体の岩なのですね。それが地面の上で不安定に一角で支えられている。それが現在の収入の不安定さを表わしています。経済的基盤がいつ崩れるか分からない恐怖が、夢に現われたのですよ。でも、ご覧なさい。巨大な岩は不安定に佇立してはいますが、周りからしっかりと支えられているではないですか」
確かに彼女の言う通り、中心の立方体は不安定な立ち方はしていたものの、周りの楔形の岩が四方から支え、バランスを保っていた。
「おっしゃる通りです。立方体は倒れそうでいて決して倒れないように見えない部分で支えられているんですね。僕は初め、そのことに気づかなかったのです。楔形の岩が良く見えなかったために、立方体が一点で逆立ちしてるように思っていたのです。そのイメージが僕を不安に陥れたのです」
「やっと気づかれたようですね。あなたの経済基盤は何も病院の収入だけで支えられている訳ではないのです。病院の収入は言ってみれば、立方体の一角で地面に接している部分に過ぎないのです。その部分に心が奪われていては、不安は募る一方なのです。あなたは周りの楔形の岩にも注目しなくてはいけません」
「楔形の部分とは一体、何なのでしょう」
「それはあなたを陰で支えてくれる自然の恵みであったり、家族の援助であったりします。あなたの人生は単に、給与と言った経済面だけで支えられている訳ではないのです。そこにだけ心を奪われているから、重心の定まらない立方体に悩まされたのです」心理士の顔は次第に輝き、窓から差し込む夕陽の輝きを背に受けて、まるで後光が差しているようだった。
「先生はまるでお釈迦様か天使のように輝いていますよ」A氏は彼女の変化に目を見張った。
「私はあなたにこの世における真理を語っているだけです。どうか、この世界が金銭だけで成り立っているとは考えないで下さい。この地球上にはお金では手に入れられない貴重な存在が山ほどもあることに気付いてほしいのです。自然の山河や動植物。太陽を筆頭にした宇宙の星々。家族の愛や人と人との触れ合い。どれ一つ取ってみても、決して金銭では手に入れることができないものばかりです」
「そうですね。僕はこの所、金に追いまくられていたようです」
「あなたは金策の心配ばかりしなくても良いのです。今日一日いかに充実して生きられるかさえ考えて、一瞬一瞬全力を、尽くしさえすれば、それで充分なのです。明日のことをあれこれ心配する必要などないのです。あなたはこの世に生を受けたからには、あなたのことを気にかけていて下さる存在が必ずいるのです。それを神と呼ぼうが、大自然と呼ぼうが表現は自由です。ただし、これだけはしっかり心に留めておいて下さい。あなたの人生はあなたを生み出した未知なる力によって、しっかりと守られていると言うことです。あなたの立方体を支える楔形の岩のように・・・」
A氏の目は潤み、心理士を浮き彫りにした夕陽の輝きを、その瞳に映し出していた。
  20に続く

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サービス精神

サービス精神

マンツーマン教育やマッサージではサービスを与える側も受ける側も一人ずつである。従って与える側が全力投球すれば受ける側に直接、満足を与えられる。逆に与える側が手を抜けば受ける側は即座に不満を感じるものだ。ただし頭の中で何を考えていようと相手に分からなければ問題は起きない。
契約した時間内では与える側は全力を尽くすべきなのに空いた時間を他の事に費やしたら問題が発生する。受ける側が与える側の不誠実を感じ取るからである。受ける側が気づかない程度に与える側が物思いをするのは差し支えない。全ての作業が終わった後で空き時間があったとしても、残りの時間を他の用事に向けるのは受ける側にとって礼を失するとの思いを抱くべきだ。

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