公立中学

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神埼良太の転機5

その5)
評価
「それがひょんな事から俺に対する嫌がらせが止まった。その体育教師からもクラスからも。俺が二学期早々、成績優秀者に選ばれたからなんだ。世間は現金なものよ。成績が上がった途端に人からの評価も変わる。俺は人間の心のさもしさをその時知ったよ。え、どうして急に成績が上がったかって。それは猛烈に勉強した結果さ。
おれはその頃、倫理の授業で『昇華』っていう言葉を習った。その時の俺の状況にぴったりの言葉だと思った。『昇華』というのは簡単に言えば、不遇をバネにして飛躍するという意味なんだ。その時の俺は左腕を怪我してて好きなギターも弾けなかった。体育の引見教師からだけではなく、クラスのほぼ全員からシカとされていた。俺は学校にいたくなかった。放課後には走るようにして家に帰ったものさ。
帰ると二階の勉強部屋に直行した。そして分刻みの計画表に従って問題集を解きまくった。初めは『いつか皆を見返してやる』という気持ちもあったかも知れない。だが次第に俺は数学や英語そのものに没頭し出した。問題を解くのが楽しくて仕方なかった。時間の経つのも忘れて解いたものだった。食事と風呂の時間以外は勉強部屋にこもっていた」と良太の目は輝き出していた。
『勉強がそんなに楽しい筈ないじゃん。俺は勉強は入試の手段としか考えられなかった」と水沼は不審げに反論した。
「感じ方は人それぞれ違うかも知れないけどね。俺にとっちゃ数学の問題を解くのはパズルを解くようなものだった。勉強も自発的に好きにやれば遊びと変わらないってことがあの時、分かったのさ。俺は小さい頃プラモを作るのが好きだった。プラモは説明図を見ながら小さな部品を一つずつ組み合わせて行く。そして複雑な形が完成する。
数学の問題を解くのもプラモ作りに共通する部分がありそうだ。一つの答えを導くまでに幾つかの法則を使って式を組み立てて行く。俺は簡単な問題から難しい問題へと次々に解き進んで行った。一つ、二つ分かんない問題があっても飛ばしてどんどん先へ進んだ。その内、一学年も二学年も先の問題を解けるまでになった」と良太は自慢してるつもりはなかったが、水沼には多少自慢げに聞こえたのだろう。彼は適当な相槌も打たず黙然と聞いていた。
「俺は予備校の夏期講習でもまずまずの成績を修めた。成績優秀者には景品が出たんだ。俺はまるで賞金稼ぎのように景品を稼ぎまくった。夏休みほど効率的に勉強した時期はなかった。起きてから寝るまで机に向かい通しだった。俺は何かに憑かれたように問題集を解きまくった。
6に続く

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