夢での憐れみ

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良太の転機10

その10)
キリスト教の排他性
「選民思想ってあまり聞き慣れない言葉だけど一体、何なんだ」水沼は目を白黒させている。
「聖書はユダヤ地方に古くからある書物だ。そこには神の言葉が書かれていると信じられている。しかもユダヤ人たちは神の言葉が自分たちのためだけに与えられたものと考えた。そればかりじゃない。神の言葉に従っていれば、彼らはやがて偉大な王国を築けると期待していた。
それには幾多の歴史があった。人類の祖と言われているアダムとイヴがエデンの園を追放されて以来、神と人間の間には深い溝ができた。その後、人類は神に背いて好き勝手な生活をしていた。その結果、神の怒りが下り、ノアという者の家族を残して、すべての人類が神の手で滅ぼされたと書かれている。考えて見るとひどく残酷な話なんだ」
「神っていうのは恐ろしい存在なんだな。生命をそんな風に絶滅させるなんて」水沼は神を以前は守り神のようにしか考えていなかった。
「ノアの子孫にアブラハムがいて、その子がイサクと呼ばれ人類の系譜が続いて行く。ユダヤ人は系図を大事にし、通常アブラハムまで祖先を遡ることが多い。歴史上で彼らはダビデ王やソロモン王の時代には繁栄を謳歌した。かと思えばモーセの時代にはエジプト人に苦しめられ、その後、バビロン捕囚という辛い目にも遭った。それにも拘らず、彼らは神から離れなかった。神が彼らを長きにわたって常に保護してきたと固く信じている。その考えがユダヤ人の中に選民思想を形作って来たのだと言えるんだ。つまり彼らは特別に神から選ばれた民ということなんだ」
「それは俺たちキリスト教を知らない人間から見たら自分勝手な考えのような気がするな」水沼は関係もないのに不愉快そうだった。
「選民思想を持っているのはユダヤ人だけじゃないんだ。聖書を読み、キリスト教に関心を持つ者は誰でもこの選民思想に偏りやすい。つまり神を信じている自分達だけが救われて、天国に入れるといつしか考えてしまうんだな」良太は半ばやり切れない思いをしていた。
「じゃ、神を信じてない我々は天国に入れず、地獄行きってことかい。厳しい仕打ちだなあ」水沼は恐れるというより呆れたように言った。
「残念ながらクリスチャンでも自分だけ救われれば良いと考える人間がいることは確かなんだ。本当に悲しむべきことさ。僕がキリスト教に馴染めなかったのは実はその点にあったんだ」良太は道行く人々に眼をやった。
「俺もそれ位は知ってるよ。キリスト教は排他的なんだろ。だからキリスト教とイスラム教が対立したり、キリスト教とユダヤ教が対立したりって話は聞いたことがある。現にキリスト教国のアメリカとイスラム教国のイラクが戦争してるわけだしな」水沼にかかると話がすぐ大きく発展する。
11につづく

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