神の光

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良太の転機7

その7)
聖書
俺の家には聖書が山ほどあったけど、その時まで俺はそれに目もくれたことがなかった。何故って、そこには堅苦しいことばかり書かれていたからさ。ところが声を出して英字聖書を読んで見てびっくりした。そこに書かれている言葉が新鮮に俺の心に入って来たのさ。そんなことは今まで一度だってなかった。当時、俺はすべてに失望していた。勉強にも遊びにもそして人生にも。そして生きる意味さえ見失っていた。そこで読んだ聖書の言葉は強烈に俺の心に響いた。枯渇した心に吸い取られる清水のようだった」
何故か良太の顔には晴れ晴れとした表情が浮かんだ。
「俺は聖書なんて読んだことはないけど一体どんなことが書かれてるんだい」水沼も少し興味があるようだった。でも宗教心は全くない。
「イエス・キリストという人の生涯と働きが書かれてるんだよ。簡単に言えば」良太は簡単過ぎる答えをした。
「何故そんなに感動したんだい」
「イエス・キリストの生き様に心を打たれたんだよ。人類のために自分の命を犠牲にしたんだ。それも昔から預言されていた通りににね。彼の生涯を読んで俺はこのまま怠惰に時を過ごしてはいけない、世のため、人のために何でもできることはしなくちゃいけないと思い始めたんだ。不思議な心の変化だった。その日からどうしても大学へは行きたくなった。その時の実力で入れる大学にでも入れればよいと思っていた」良太は再び前向きに考え始めた、その頃を思い出していた。
「もう一つ大きな変化があった。その時まで憎んでいて、いつか復讐してやろうとも考えていた高校の体育教師、天野に対する憎しみも消えていた。イエスが十字架上で流された血がすべての憎しみを洗い流してくれたみたいだった。俺はやっと過去の亡霊にわずらわされず前を向いて進むことができる自分を発見した」水沼は黙って聞き入っていた。それでも再び受験のことが気になり出したようだった。
高3になって受験勉強はしなかったのか。」水沼は飽くまでも、実利的なことが気にかかる。
「受験勉強なんてしなかったさ。俺はその時、持ってる力で勝負しようと思ってたんだ。」良太は少し自慢げだった。そして続けた。
「だから一度目はすべて落ちた。でも未練がましく夜学に少しだけ通ったんだ。それは長続きしなかった。俺は親に無理言ってもう一度、挑戦させてもらったよ。そん時だって受験勉強はあまりしなかった。今から考えると無茶したものさ。」良太の胸には死んだ両親に対する切ない思いがよぎった。
「でも一浪で大学に入れて良かったよな。入ってからは真面目に通ったのかい。」水沼は良太が大学生活も永続きしないと予想していた。
「いや、入学してすぐに授業に失望した。期待していた授業にはついぞ巡り会わなかった。俺は大学には失望した。授業はサボり、バイトと部活に明け暮れてた。」
8に続く

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