病者と健康者

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良太の転機11

その11)
就職
「そこまで広げずとも教会内でも信者同士のいがみ合いなんかもあるんだ。僕は人間関係のややこしさが苦手だった。僕が求めてたのは神と直接つながり、そこから救いや力を受けることだった。ところが就職と同時に神と僕とのつながりはぷっつりと切れてしまった」
良太は悲しげに床のフローリング模様を見つめた。
「そうだよ、仕事を始めれば他のことは何も考えられなくなるもんな。俺もそうだったよ。ボトリング工場に勤め始めた頃は家に帰るとぐったりして何もやる気が起こんなかった。何せ肉体労働で汗はびっしょりかくし、車運転しながらも現金を扱ってたもんだから、一日中、緊張しっぱなしだったよ」水沼は仕事の大変さについては心から同情していた。
良太は思った。『青春時代に救われたと思ったのは幻だったのだろうか。一時の気まぐれで救われたと錯覚したのだろうか』彼は一つの大きな勘違いをしてたのは事実だった。一度、救われるとその状態が持続すると考え油断していた。良太は安心し切っていたのだった。
ところが救いはそんな生易しいものじゃなかった。「天国の入り口の前にも地獄へ至る道がある」と言われるように、救いに安住した日から破滅は始まっていた。良太がそのことに気づくのははるか先のことだった。
そもそも良太が救われた時、優越感を持っていたことも屈折した考えの影響があったのだろう。彼の心は親戚関係で屈折していた。父のいとこの子供、つまりはとこに対して異様とも言えるライバル意識を燃やしていたのだ。良太より歳は20歳近くも上のはとこに何故、こうも感情的になるのか不思議でならなかった。
12に続く
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