テレビの弊害

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良太の転機13

その13)
嫉妬の材料
「さらに決定的な嫉妬材料があったんだ。僕らの家族には家があったってことさ。しかも東京の高級住宅街とも言える所に一戸建ての家があったんだよ。彼らは逆立ちしたって手に入れることはできない事を知っていた。それでも忠男さんは懸命に努力して仕事に打ち込んだ。高専卒にも拘らず知り合いの工学博士が紹介してくれたM自動車で頭角を現して来たんだ。
彼が部長に上り詰めた時は僕が彼に嫉妬を燃やす番だった。彼としては『してやったり』と思ったことだろうね。ところが部長職になったにも拘らず住宅は茨城のマンションを手に入れただけだった。所詮、一戸建てには手が届かなかったのさ。だから彼の優越感も中途半端な形で終わってしまったんだ」
「そう言えばお前M自動車の車には一時、敵意を持ってるようなところがあったよな」水沼は思い出したように言った。
「そうさ、親戚の忠男さんに対する嫉妬は根深いものがあったんだ。僕自身の就職が安定していなかったからさ。せっかく入った大学も中退した。どんな良い大学でも中退すれば高卒の扱いしかされない。日本の会社では学歴で給料も仕事内容も違って来るというのを思い知った時期だった。僕は履歴書を何通も書いては新聞広告を見て、求人申し込みをしたもんだ。
そんな時に忠男さんは順調に出世街道を走り続けていた。僕は彼と比較して自分の惨めさをいやって言うほど感じていたんだ。なんで同じ位の能力があるのに、一方は部長で自分は中小企業にさえも就職できないんだと身悶えした。相手が完全な優位に立っているのを見ると嫉妬は敵意へと変わって行くもんなんだね」良太は当時の悔しさに唇をかみしめていた。
14に続く

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