凶暴な自分

凶暴な自分.jpg
1552177094617.jpg
nice!(0)  コメント(0) 

神埼良太の転機6

その6)
結果
その結果は完璧な形で二学期初め学校の実力テストで現れた。数学は大問が4題しか出なかった。どれも準入試レベル級だった。俺は時間が足りず1問だけ解けなかった。英語と国語もそこそこに解けた。
結果発表は1週間後だった。朝、教室に入ると普段と違ったざわついた雰囲気だった。教室の一角には人だかりがしていた。俺は気にしないでいた。すると友人の一人が『神埼、お前の名前が載ってるぞ』と声をかけて来た。俺は皆の視線が俺の方に向いてるようにも感じた。
人だかりが途切れたのを機に俺は貼り紙を見に行った。俺は自分の眼を疑った。その順位表のトップに俺の名が載っていた。数学75点1位、英語92点2位、総合239点1位。俺は嬉しさが実感として湧かなかった。あまりにも信じられない結果だったからだ。何故なら一学期の学力試験では280人中100位だったからだ」と良太は当時の興奮をかみしめていた。一方、水沼は良太の自慢話に辟易しかかっていた。誰でも他人の自慢話には耳を傾けたくないものなのだ。
「結局その成績と嫌がらせがどう結びつく訳」と水沼はあくびをかみ殺しながら聞いた。
「成績発表の日からなんだよ、皆の俺に対する態度が手の平を返すように変わったのは。学校という社会で成績が人間の価値を決めてしまうのがつくづく実感できたよ。俺は人間のいやらしい側面をその時見てしまった。金のある奴も高く評価されるが、学校じゃ何と言っても成績が者を言うんだな。
クラスメートの俺に対する嫌がらせがピタッとなくなったばかりか、天野の俺に対する冷たい仕打ちもなくなった。その頃には腕の骨折も治って俺も普通通り体育の授業に参加してた。天野は俺に対して大声を上げることもなくなった。まるで借りて来た猫みたいに大人しくしていた。笑っちゃったぜ。でも俺の心の傷はそれで消えた訳じゃなかった。俺の心の奥底にある天野に対する怒りは変わらずに燃え続けてたんだ」と良太は再び眼に鋭い光をたたえた。
「お前の痛みが少し分かるような気がする」と水沼は相手の苦悩には同情できるらしい。
「俺は高校を卒業しても天野に対する恨みは消えなかった。恨みってものは本当に感情の深い部分にあるんだなあとつくづく感じたね。具体的な行動には出なかったものの、機会さえあれば奴をとっちめてやろうという怨念は絶えず俺の心に渦巻いていた。一度燃え上がった恨みの火というのは自分の力じゃ消し去ることができないってことが良く分かったよ。俺は悶々とした気分で毎日を過ごしていた」と良太の顔は暗く沈んだ。
「前みたいに勉強には打ち込まなかったのか」と水沼はその後の成績が気になったようだった。
「もう高二の時点で勉強には飽きた。それ以降は読書三昧の日々だった。俺は晩生で読み損なった本が山ほどあった。一日24時間じゃとても足りない位だった。SF小説・推理小説、ジャンルは問わなかった」やっと読書に目覚めた男の顔があった。
「俺は黙読だけじゃなく音読の良さにも気づき始めた。特に英語は音読が有効だと知った。口を動かすので脳も活性化されるようだった。そんな時に出会ったのが英語の聖書だった。
7に続く

nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。