怒り変換機2

その2)
「ふーん、流れは何となく分かりましたが、それで怒りが悲しみに変わるもんですかねえ」A氏は半信半疑な様子で腕を組んでいた。
「先ず実際の事例をもとにご説明した方が分かりやすいかと思われますので、セッティングを始めます」彼女は彼の返事を待たずに強引にもセンサーを彼のこめかみに付け始めた。
「うあー、いきなりですか。先生も気が早いですねえ」A氏は驚きを隠せなかった。
モニターには幹線道路を逆走している場面が映し出されている。そして道路脇に駐車中の大型ダンプの左横をすり抜けようとした瞬間、向うから走って来たサイクリング車の若者から「危ないぞ」と声を掛けられた。その時A氏のこめかみにセットされたセンサーを通じて怒りが検知され、心理士の手元の検知器が赤ランプ点滅と共に「ピッピッ」と音を立てた。
「Aさん、あなたこの時、一瞬ムカッとしましたね」
「はい、その通りです。僕は自転車でそこを逆走してたのです。歩道は歩行者が一杯で通れなかったのです。逆走すれば車が向うから走って来るので安全なのです。ところが三車線の通りに駐車している車が多かったのです。実質二車線を自動車が走り、僕は向かって来る車と駐車している車の間をすり抜けて走っていたのです」
「聞いているだけで恐いですねえ。自転車オンチの私には到底できませんわ」
「その時、向うからバイクに混じって競輪車に近い自転車とニアミスをしそうになったのです。そこで相手が小声で「危ないぞ」とか言ったのを耳にしました。それを聞いて僕は腹を立てたのです」
「それではAさんから見た場面を相手から見た場面に切り換えてみましょう」彼女はボタン操作で上手く画面を切り替えた。
「へえ、そんなことができるんですか。不思議ですねえ」A氏は盛んに感心していた。
「この機能が新開発の技術なのです。Aさんが焦点を当てられた自転車の相手の眼を基準としてゼロセッティングするわけです。そしてデジタル処理された画像に定点変更をかけた画像を映し出してみましょう。少し巻戻しをかけますよ」
モニターには車の流れに乗って走っている映像が映し出された。左車線は駐車の車に埋め尽され、その右側を縫うようにして走っていた。前方左側に大きなダンプが駐車していて、その向うからA氏の乗った自転車が逆走して来た。彼の自転車と身体はある程度はっきり見えるのだが、顔の部分がぼんやりとしていた。
「先生、僕の顔が薄ぼんやりしているのはどうしてですか」A氏は不審に思った。
「それはあなたの眼からはあなた自身の顔は見えないからですよ。デジタル画像処理をするとしてもデータ自体が取れないのです。そこでぼんやり画像で補うしかないのです」
ぼんやりした顔のA氏の自転車は駐車していたダンプと流れる自動車の間をすり抜け目の前、左側をスレスレに通り過ぎた。
「Aさん、こちら側から見ると随分、危ない運転をされてますね」心理士は冷や冷やしながら、その映像を見ていた。
「はあ、相手の眼から見ると僕の運転も無謀なところがあったんですねえ。あれ、何か変な音がしますね」その音は次第に大きくなった。
3に続く

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能動的そして受動的性感帯

能動的そして受動的性感帯

性感帯は普通、受動的と考えられている。女性を想定しているからだ。確かに女性の性感帯は全身に張り巡らされている。一方、男は局部的だ。能動的性感帯とは道具としての機能も併せ持つ。指先、唇、舌などである。これらは相手の性感帯を刺激しつつ自身も快感を味わっている。更に男性自身も能動的そして受動的性感帯の機能を持っている。
男は目から刺激を受けやすい。目は見る対象を選べると言う点で能動的である。ところが目は受けた刺激を脳に送り込むと言う点で受動的である。目で相手に想いを伝える機能は確かに能動的だが、それは受ける相手がその想いを察した時点で意味を成す。そして相手も自分の想いを目で返答した時点で刺激は双方向となるのである。

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