啓示 最終回

最終回)
「あなたは結局、注意してたけど相手のオートバイに最後まで気がつかなかったってことおでしょ」
「簡単に言えばそうだよ。何も見えなかったにも拘らず、相手がそこに存在していたことが不思議だったんだ。もし、そうであれば僕らは眼に見える現象だけで、すべてを判断したら失敗する事も有り得ると初めて気づいたんだ」
「それは死角ってことかしらねえ。教習所で習ったことがあるわ」
「死角という言葉だけでは説明できないんだ。仮にもそこは網のフェンスだけが伸びていて視界は開けていた筈なので死角ではないと思う。いずれにせよ、僕はその時点から人間の感覚は非常に限定されていると考えざるを得なくなった」



「それであなたは自分に対して自信を失ったってわけね。何となく分かったわ」M子はやっと納得した様子だった。
「やっと分かってくれたかい」Hは少し疲れた様子だった。
「自信を失ったことと神様と接触する力とはどんな関係があるの」M子は更に続けた。
「僕は生まれて初めて自分を完全に捨てるしかないと心に誓ったんだ。自分をすてその替わりに心に神を受け入れるしかないと分かったんだ」
「聖書にも信じる者の心には神がいるって書かれてるけど、あたしは心の中にまで神の存在を意識したことはないんだなあ。神は自分の外、例えば空にいたり、自然の中にいたりするとしか考えられないんだもの」
「勿論、自然の中に神がいるのは確かだよ。でも重要なのは心の中にいる神と出会うことなんだよ。心にいる神を認められれば、いつでも神と対話することができるんだ。僕は自分を捨てた瞬間から心に神が入り込んで来たのを感じたんだ」
「と言うことは自分を捨てない限り心の内の神様には出会えないって訳ね。あたしも早く神様に出会いたいわ。あなただけずるいわよ」M子は少しむくれた。
「僕も努力して勝ち取った訳じゃない。神から与えられた機会が僕を変えたんだよ。君も求めていれば必ず神に巡り会う機会は得られるよ」
「本当にそう。あたしもあなたみたいに早く心の中にいる神様と話したいなあ」M子は羨ましそうにHを見た。

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男である時間、女である時間

男である時間、女である時間

男である時間は精通に始まり終わりはない。女である時間は初潮に始まり更年期で終わる。男の平均寿命は女のそれより圧倒的に短いが、上記の理由により男である時間は女である時間よりかなり長い。その分、男の方が女より生産性は高い。生まれてから用をなす時期迄は男女とも未完成なので考慮には入れられない。完成してから後の期間が問題なのである。
男にとって男である時間は死ぬまで続くので異性に対しての色目は衰えることはない。女が着飾ったり化粧したりする第一の理由は男の色目を意識しているからである。同性を意識して化粧する事はあっても着飾ったりは決してしない。更に女でなくなった時期から異性からの色目が感じられなくなり同時に化粧や着飾りは好い加減なレベルに落ちる。

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