長いトンネルの向こう2

その2)
 聡史が残業を終えて家に帰ると加代たちは戻って来ていた。そして聡史は彼女が異常なほど無口なのに驚かされた。言葉の受け答えがひどく辛そうだった。無口なだけでなく、話す内容が現実離れして天国の事を話していた。
 その夜、偶々テレビで放映されていた「天国へ続く階段」というアニメの内容が鮮烈に彼女の頭に残り、現実の体験と交じり合っていたのだった。聡史は農業体験で相当疲れ、知らない人達の中で眠れなかったのだと推測した。彼女には多少、神経過敏なところがあった。その夜はお互いすぐに寝ることにした。
 次の朝、聡史は寝坊した。慌てて着替えを済ませ、家を出ようとすると加代の様子が尋常ではなかった。不安に包まれた怯えた眼をして聡史に訴えた。
「あなた、外へ出ないで、交通事故に遭うわ」
「いや、もう出かけなくては遅刻するよ」
「今日は家にいて、お願い」そう言って彼女は聡史の腕を離そうとはしなかった。
 聡史はついに諦め、その日は会社を休むことにした。その後すぐに彼女は腰が立たなくなり、そのまま病院へ搬送した。結局、一週間ほど入院して点滴を受け、静養することになった。
 その後、1、2度、睡眠不足が続いた後に倒れて、病院で点滴を受けることはあったが、しばらくは落ち着いていた。ところがその年は多くの出来事が続けざまに起こった年だった。そのどれもが加代の精神には負担が大き過ぎた。
 聡史はその年の初めに人身事故を起こしていた。勤め始めて一年しか経っていない会社の目の前で事故は起こった。その朝、聡史は些細なことで加代と口論し、普段はバスで通う会社へ車で来たのが間違いの始まりだった。
 聡史は交差点での出会い頭の事故で相手のオートバイドライバーに全治6ヶ月の重傷を負わせた。事故当日、家に電話すると落ち着き過ぎた加代の声に安心もし、逆にその対応が聡史を不安にもした。
 この事故で聡史の魂は完全にくず折れた。いかに自分だけに頼っている行為が危ういものかを思い知らされた。聡史は日常の判断さえもイエスに明け渡さねば、再び同様の事が起こると実感した。
 さらにその事故がほぼ直接の原因で、聡史は一年余りいた職場を後にし、今の職場に移った。度重なる転職で本人以上に加代は精神的痛手を受けていたことと思う。
 次の事件は中学に入学した息子がクラブ内でいじめに遭ったとの連絡を学校から受けたことだ。最終的にはいじめた生徒たちと顧問教師が自宅まで来て謝罪し、一件落着した。その時、一人で応対した加代は深い心の傷を負ったことだろう。
 やがて彼女にとっては脅威の夏がやって来た。それまでも夏場は不眠が原因で体調を崩すことが多かったからだ。その年も夏に行事が重なっていた。
 7月下旬の土曜日、下の息子の誕生日に加代の神経は最高潮に張り詰めた。そして切れる寸前まで高ぶっていた。前日まで連夜にわたる部屋の片付けと誕生会準備に費やした努力と徹夜が、疲労となって蓄積しているのに加代は気付かないでいた。
 誕生会は無事に終わったものの、夕方から彼女の様子がおかしくなった。何でもない聡史を眼医者や救急病院に連れて行こうとした。聡史は眼鏡を外すとほとんど何も見えない。偶々その日、眼鏡を紛失し、家の中を手探りで歩いている様子を見て、加代は聡史の眼か頭が異常を来したと思い込んだ。
 精神が昂揚している時、彼女は相手の話を聴かない。自分の思いを優先するのが常だった。聡史は彼女に言われるままに眼医者へ行き、救急病院にも行ったが、聡史に異常のある筈はなかった。
 逆に聡史は彼女を医者に連れて行かねばならないと心に決していた。ところが困った事に彼女は人の異常は気遣うが、自分の異常には無頓着だった。やっと心療内科に行く約束だけは取り付けた。
3に続く

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夢の検証314

夢の続き

杉並のS教団駐車場に車を駐めていた。出庫しようとすると門を閉められたので文句を言った。車を出して走っているといつの間にかバイクに代わっていた。ガソリンが少なくなったので給油が必要だと思った。家に戻ると前の道路が工事中だったので近くの空き地に駐めた。
家で次男の相手をしているとバイクが気になった。空き地に行くとバイクが誰かに使われていてボートを引っ張るのに使われていた。ボートには何人かの女子が乗っていた。その内の一人が池に飛び込んで泳いでいた。

検証314
S教団の隣はバザー場になっていて駐車場が共用なので勝手に停められないから不便だ。車に乗っていてもバイクに乗る願望は捨て切れていないようだ。バイクの給油は少ないので早く済み便利だ。

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