前哨戦9

その9)
機械の組立ては僕に合っていたようだ。と言うのは小さい時から工作やプラモ作りが好きだったからだ。ただし工作のように机の上で作業した訳ではなかった。一列に並べられた機械の間を行き来しながら組み立てた。
横幅が70から80cm、高さが身長ほどの木箱が大型トラックで搬入されて来た。下にキャスターがついているので、押して工場内に3列に並べる。木箱は傾け過ぎると倒れたので押すのにも注意が必要だった。
並べられた木箱に社長が左右2箇所ずつ電気ドリルで穴を開けて行った。穴あけはベテランでないと勤まらない。穴あけをミスると後の工程に響くからだ。其の穴に僕たち作業員が箱の外側からボルトを指し込んで行った。
指し込まれたボルトの先端に引っ掛けるように内側からブランケットと呼ばれるL字形金属板を置いて行った。そこで指し込まれたボルトが緩いとブラケットが上手く引っ掛からなかった。ドリル穴の大きさが大事だった。
次にボルトの先端にナットをねじ込み、ブラケットが落ちないようにした。其の際、僕はアルバイトで初めての工夫をした。ナットを片手でねじ込むのは時間が掛かると考え、両手を使ってナットを2個ずつねじ込んだのだ。
作業を監視していた社長に其の作業方法が認められ評価されたのは嬉しかった。作業の効率性を考えて仕事をすれば、新しいやり方が発見できる。新しい作業方法を考案すれば自分だけでなく、管理者にも満足を与えられるのを知った。
仮締めしたナットを本締めするにはエアードライバーという道具を使った。初めて見る其の道具は圧縮空気の圧力で軸が回転した。軸の先にナットに合ったピットを指し込めば準備が完了した。
ピットをナットにあてがい、ドライバーのレバーを引くとエアーの圧力で軸が回りナットを締め付けた。ナットを締め付ける加減も重要だった。外側に飛び出たボルトの頭が箱に食い込まない程度に締めなくてはいけなかった。
其のブラケットはTVモニター台を受ける為のものだった。当時からアップライトゲーム機はTV型が主流となりつつあった。インベーダーはおろか、未だブロック崩しも出ていない段階でアタリ社のアステロイドもどきのゲームだった。
モニター台にTVを設置して前半作業が終了する。そこまでは中腰の作業がメインだが、後半は腰を折る作業に突入する。中腰の作業も腰に負担が来るが、腰を折っての作業はかなりきつい。
作業環境の悪さで腰を痛めて職場を去って行ったパート社員が何人もいた。モニター台の下には頭と腕を突っ込める程のスペースが開いていた。そこに頭を突っ込みながら底部に置かれた電源関係の作業をするのだ。
TVゲームの内部には空間が多い。TVモニター以外の部品は殆どが木箱の底部に置かれていた。電源トランス・メイン基板・制御基板等のこまごました部品がそこにはあった。
それらの部品を木箱の底部に固定するにはナットで締め付けねばならなかった。50cm四方の穴から手を突っ込み、膝立てで腰を屈めながらの作業は最大の山場だった。
10に続く


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先生呼ばわりの弊害

先生呼ばわりの弊害

マンツーマンの私塾でも教える側は先生と呼ばれる。未だ学生の分際で先生呼ばわりされる業種は教育産業以外には有り得ない。彼ら、彼女らは問題を溶ければ教えられると勘違いしている。自分の知識を子供たちに押し付ければ満足しているようだ。本当の教育とは子供のレベルに合わせて弱点を補強する作業だと理解している者は少ない。
学生時代に先生呼ばわりされて舞い上がった彼らは卒業して実社会に出ると落差を感じる。会社では先生呼ばわりされないばかりか、先ず部下としての憂き目を経験せざるを得ない。学生時代に一度、甘い汁を吸ってしまった者達は卒業後の人生で不条理な困難を人一倍、感じずには済まない。

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