怒り変換機1

その1)
「こんにちは、良い天気ですね」
「いらっしゃいませ。Aさん、久しぶりですね。秋晴れが続きますね」
「昨日メールが入ってて今度、怒り変換器による治療も始められたと聞いたんですが、それはなんですか」
「はい、つい先日から始めたばかりなのですが、好評なのでただいま皆様にご紹介している最中なのですよ」
「今日その説明だけでも聞くことはできますか」
「ええ宜しいですよ。実は予約が一杯なのですが、Aさんでしたら予約の合間に入れて差し上げますわ」
「ああそうですか。有難うございます」
「では廊下奥へどうぞ。怒り変換器については赤の扉からお入り下さい」
A氏が部屋に入ると悲しげな短調の音楽が流れていた。入り口の扉は鮮やかな赤だったにも拘らず、部屋の壁はクリーム色と茶色を主体とした色調で統一されていた。暫くするとドアにノックの音がした。
「こんにちは、お待たせしました。Aさん、お久しぶりですね」
「あ、先生ですか。担当が変わられるのかと思いましたが」A氏はいつもと同じ心理士だとは思ってもいなかった。
「あら、担当は好きなように選べますので私でなくても結構なのよ」心理士はすねたような素振りを見せた。
「いえ、いえ、そういう意味ではないんです。{夢解析}と{怒り変換}とは診療内容が全く別個だと考えたので、あなたが入って来られて意外だったのです」A氏は額の汗を拭った。
「ああ、そういう意味ですね。夢も怒りも出所は同じなのです。潜在意識と呼ばれている所です。私はその分野で長年研究を重ねてまいりましたので、どちらの対応もできるのです」彼女の説明する態度には威厳が感じられた。
「それを聞いて納得しました。僕は他の方に診てもらう位だったら勿論先生の方が良いですよ。先生は僕の心の奥深くまで見透かされていますからね。心も身体も裸にされたようなものです」
「それは極端ではないですか」そう言いながら心理士は顔を火照らせた。
A氏はテーブルの上に置いてある怒り変換器に目を留めた。特に何の変哲もない機器だった。
「夢解析器と外観は余り変わらないようですが、何か違いでもあるんですか」
「ええ、基本的な動作は殆ど変わりません。ただ2ヵ所パッチセンサーが追加になりました。こめかみと目尻です。こめかみでは怒りの徴候を検知します。また、目尻では悲しみの徴候を検知します。そして怒りがどの様に悲しみに変えられるかを検証するのです」心理士は2種のディスポセンサーを手に持ってA氏に示した。
「検知の方法は分かりました。それでは肝心の怒りを悲しみに変換する仕組みはどうなっているのですか」A氏はいきなり鋭い質問を彼女に投げ掛けた。
「はい、それではご説明しましょう。怒りには人物なり物なり必ず対象が伴います。検知機能で先ず怒りの対象を特定します。その対象とあなたとの係わりを時系列的に拾い上げます。それを第三者的な眼で見て、状況を分析するのです。その時できるだけ当事者同士を公平な立場で捉える必要があるのです」心理士は要点だけをかいつまんで説明した。
2に続く


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夢の検証316

夢の続き

千葉県にある田川村に古民家展示場があるとパンフレットに載っていた。ネットで調べたが最寄り駅ものってないし、展示場ものっていなかった。

検証316
千葉県に田川村があるかどうか分からない。最寄り駅も見つからないくらいだから多分実在しないのだろう。古民家には興味があり一度泊まってみたいとは思っている。

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