啓示4

その4)
神は中空の雲の動きを見ながら暫し押し黙った。Hと悪魔もそれに従った。徐に神は再び口を開いた。
「よし、わしは決めたぞ。HをB病院に送り込むことにしよう。Hに注いだわしの力で、そのB病院がどれだけわしの望む働きをするようになるか見るとしよう」神は新提案を持ち出した。
「B病院といやあ、あるキリスト教組織が運営する病院じゃないっすか。俺はそんな場所へは入り込みたくねえなあ」悪魔は強く反対した。
「わしは何もお前を送り込むつもりはないんじゃ。お前はただ傍観してれば良いだけじゃ。お前さんに下手に手出しでもされようものなら、職員の魂は益々わしから離れ去るだけじゃからのう」
「僕はいつからその病院に入り込めば宜しいのですか。今は既に勤めている会社がありますというのに」Hは様々な思いを巡らした。
「Hよ、おぬしは何も悩まんで宜しい。わしが凡ての段取りをつける。おぬしはわしの指示に従って動けばそれで良いのじゃ」
「僕は病院も医者も嫌いなんですよ。病人に興味がある訳じゃないですし、医者はやたらと威張ってますからね」
「それでもおぬしはもうすぐ50歳を迎えるじゃろ。今を逃したら一生、病院勤めはできんぞ。これが最後のチャンスなのじゃ。病院は安定しとるから定年まで勤めれば楽であるぞ」
「そうですよ、Hさん、病院じゃ綺麗な看護婦さんが多いですぜ。男より女が多い職場なんて魅力的だなあ。あっしが替わりに行きてえぐらいですぜ。何とも羨ましい。毎日、白衣の天使に囲まれて仕事し、アフターファイブはアバンチュールなんて涎が出そうだぜ」悪魔は眼をうっとりさせ妄想の世界に浸っていた。
「おい悪魔、余計なことは言わんでよろしい。Hに変な下心を持たせたらいかん。それでなくとも彼は誘惑にかかりやすいタイプじゃからの」神は心配そうに腕組みをした。
「あ、僕は何だか病院に行く気分になって来ましたよ。目の前がバラ色になって来ました」Hは嬉しそうに鼻の下を長くした。
「現金な奴だな。色と金に惑わされておる。もう一つ良い知らせがあるぞ。病院は10億円かけて建て直したばかりで、おぬしは新品の建物の中で仕事ができるのじゃ」
「え本当ですか、それは良いタイミングですね」
「そうと決まったら、わしがすべての段取りをつける。おぬしはさっそくI事務長と面接しなさい。必ず適当なポストが与えられよう」そう言って神は忽然と姿を消した。
「じゃあ、あっしもこの辺で戻りまっせ。Hさん、武勇伝を待ってますぜ」悪魔もすぐに姿を消した。
5に続く

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