良太の冒険7

その7)
(お化け話し会)
学校から帰ると良太はランドセルを部屋に放り投げて、おやつも食べずに星野冴子の家へ向かった。彼女の家は道路に面したアパートの二階だった。家に近づくと二階の窓から何人かのクラスメートの姿が見えた。いち早く、菅谷は良太に気付き、手を振りながら叫んだ。
「神崎君、右横の階段から登って来て」とまるで自分の家のような言い方をした。
良太は言われた通り、横の階段を登り切ると、左側にクリーム色のドアがあった。ドアを開けるとすぐ玄関になっていた。板の間を仕切る襖は開け放たれていて、奥の部屋が素通しになっていた。十畳以上ある広さだった。そこには既に菅谷を初め、2,3人の女の子が座っていた。
「神崎君、こっちへ来なさいよ。今日は星野さんち、皆んな出かけてるから安心して良いわよ」と彼女はまるで、我が家のような気安さだった。彼女自身が一番、安心している感じだった。
「神崎君、一人で来たの。山口君ち寄れば良かったのに」と菅谷の手下の藤井宣子は彼女の気持ちを代弁して言った。
「山口は代表委員会に出てて、未だ帰って来てないと思ったから、僕は先に来たんだよ。加藤弥太郎が後から一緒に来ると思う」と彼は言い訳した。良太としてはライバルの山口には、あまり来てほしくなかった。でも女の子たちは山口を待ち焦がれていた。
「まあ加藤君は山口君の金魚のふんだから、どうでも良いんだけど、山口君が来ないと盛り上がらないわよねえ」と麦茶を盆に乗せた星野もがっかりした様子だった。
―菅谷だけではなく、星野も山口のファンなのか。
 良太はガックリ来た。玄関のドアが開く音がした。
「誰かしらねえ」と皆、期待する。そこへ運送屋の杉田光春と星野の二軒ほど先の菅沼憲次が揃って来た。
「何んだあ、山口君じゃないのか」と女の子たちはガッカリした。
「俺たちが来ちゃ悪いみたいだな」と二人はぶうたれた。
「まあ君たちでも良いわ。そろそろ始めましょ」と菅谷は言いながら、女の子、数人でカーテンを閉め始めた。部屋は薄暗くなった。風が入らないので空気はムッとして来た。
8に続く
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