良太の冒険8

その8)
(怪談その1)
「じゃ私から始めましょう」と菅谷が先陣を切った。
「明治の昔、愛する男女がいたのよ。二人は結婚を反対されてたの。男は由緒ある家柄で、女の人は貧しかったからなの。二人は心中を決意して夜の海岸を歩いた。星明りに照らされた砂浜に銘々、名前を書いたの。そして愛を誓ったのよ。死んで、あの世で結ばれることを願ったの」と彼女は息をついた。
―ませてる菅谷らしい話しだ。
 誰もが息を殺して聞き入っていた。
「二人は手を取り合って、砂浜から海の中へ歩いて行ったわ。月明かりが綺麗な晩で、打ち寄せる波もおだやかだった。二人の体は膝から腰まで浸かり、やがて肩まで浸かって行ったの。その間、二人は時折、お互いを見つめながら愛を誓い合っていた。しばらくすると女性の顔の一部が浸かり始めたけど、静かに歩き続けた。男性は女性を抱き寄せながらも、歩みは止めなかった。ついに男性のあごが水に浸かる頃には、女性の体は完全に海に沈んだの。男性は事切れたらしい彼女を抱きかかえながらも、さらに進み続けた。
ところがね、そこで妙なことが起こったのよ。男は彼女が動かなくなるのを見届けると向きを変えて、岸辺に歩き始めたの。すがり付く彼女の腕を振りほどこうと、海の中で体をねじ曲げる男の姿が月明かりに照らされていた」と菅谷が一息ついた。周りからは「ひどい」「残酷」という女の子たちの声が聞こえた。
「男は振り返りもせず砂浜に向かった。振り向くのが怖かったの。彼女が泳いできそうな気がしてたのよ。その頃には月が雲に隠れて、辺りは薄暗くなっていた。男はさっき、二人で書いた砂浜の名前を見た。男は思わず声を上げてしまった。女性の名前だけが赤く血に染まって、くっきり浮き出ていた。薄暗い中でも鮮明に光っていた。男の名前は消えかかってはいたけど、薄いピンク色に染まり始めていた。見る間にピンクは濃さを増して行った。男は怖くなり名前を踏み消して、その場から逃げるようにして立ち去った」さらに菅谷は続ける。「長いんだな」という男の子の声があった。
「男はその後、彼女のことはきれいさっぱり忘れてしまった。やがて親の紹介で、見合い話が持ち込まれるとすぐ結婚してしまったの。相手が社長令嬢だったからね。幸せな日が続いたわ。ところが、ある夏、奥さんは泳ぎたいと言い出した。それも前の彼女が入水自殺した、あの海岸で。男は迷ったけど、過去の思いを無理に振り払うように、その海岸へ出かけた。
男はひとしきり泳いだ後、砂浜でこうら干しをしたの。奥さんは横でうつらうつら居眠りしていた。男が何気なく砂浜を見ていると、溺れた彼女の名前が血塗られて、眼の前の砂地に浮かび上がった。男は思わず叫び声を上げるのをやっとこらえたの。奥さんは旦那の異変に気付き、不審そうに辺りを見回したわ。でも男はうまく砂の文字を消していた。でも不思議にも、消した後から、血文字は再び浮かび上がって来た。
太陽ははるか遠く、山の端に沈もうとしていた。何度も砂地をこすっていた男は、おもむろに立ち上がったの。そして、もう一泳ぎして来ると言い残して、海の中に入って行った。そして二度と戻って来なかったわ。奥さんがいくら泣き叫んでも、男の姿はもうどこにも見えなかった。ただ男が寝そべっていた近くの砂に、血塗られた男の名と見知らぬ女の名がにじんでいた」と菅谷は息をついた。
「どお、こわいでしょ」と彼女は感想をすぐ聞きたがった。
「まあまあね」とか「恐くてちびった」と言った声が聞えて来た。
9に続く

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良太の冒険7

その7)
(お化け話し会)
学校から帰ると良太はランドセルを部屋に放り投げて、おやつも食べずに星野冴子の家へ向かった。彼女の家は道路に面したアパートの二階だった。家に近づくと二階の窓から何人かのクラスメートの姿が見えた。いち早く、菅谷は良太に気付き、手を振りながら叫んだ。
「神崎君、右横の階段から登って来て」とまるで自分の家のような言い方をした。
良太は言われた通り、横の階段を登り切ると、左側にクリーム色のドアがあった。ドアを開けるとすぐ玄関になっていた。板の間を仕切る襖は開け放たれていて、奥の部屋が素通しになっていた。十畳以上ある広さだった。そこには既に菅谷を初め、2,3人の女の子が座っていた。
「神崎君、こっちへ来なさいよ。今日は星野さんち、皆んな出かけてるから安心して良いわよ」と彼女はまるで、我が家のような気安さだった。彼女自身が一番、安心している感じだった。
「神崎君、一人で来たの。山口君ち寄れば良かったのに」と菅谷の手下の藤井宣子は彼女の気持ちを代弁して言った。
「山口は代表委員会に出てて、未だ帰って来てないと思ったから、僕は先に来たんだよ。加藤弥太郎が後から一緒に来ると思う」と彼は言い訳した。良太としてはライバルの山口には、あまり来てほしくなかった。でも女の子たちは山口を待ち焦がれていた。
「まあ加藤君は山口君の金魚のふんだから、どうでも良いんだけど、山口君が来ないと盛り上がらないわよねえ」と麦茶を盆に乗せた星野もがっかりした様子だった。
―菅谷だけではなく、星野も山口のファンなのか。
 良太はガックリ来た。玄関のドアが開く音がした。
「誰かしらねえ」と皆、期待する。そこへ運送屋の杉田光春と星野の二軒ほど先の菅沼憲次が揃って来た。
「何んだあ、山口君じゃないのか」と女の子たちはガッカリした。
「俺たちが来ちゃ悪いみたいだな」と二人はぶうたれた。
「まあ君たちでも良いわ。そろそろ始めましょ」と菅谷は言いながら、女の子、数人でカーテンを閉め始めた。部屋は薄暗くなった。風が入らないので空気はムッとして来た。
8に続く
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良太の冒険6

その6)
(星野冴子)
今日は憧れの星野冴子の家で「お化け話し会」が開かれる日だ。良太も呼ばれていた。彼は朝からワクワクしていた。彼女は転校して来て、未だ1ヶ月にもならないがクラスの人気者だった。
良太はある意味で恵まれていた。女子の転校生が来ると必ずと言って良い程、初めに彼の隣の席に座るのだ。席順は担任の足立教諭が決めていたので、そこには何らかの意図があったのかも知れない。良太があまりにも手に負えない生徒だったので、転校生と同じ席にすれば、慣れるまでは静かにしているだろうとの配慮だったのだろう。机は二人掛けで横長だった。
「君の家はどこらへん」と良太は冴子に恐る恐る尋ねた。彼は人見知りをするので初めての女の子にはなかなか話ができなかった。
「あたしの家は小学校と中学校の間の道を真っ直ぐ行って、角を右に曲がった5軒目よ」と彼女はごく、あっさりと答えた。
「だったら菅沼と菅谷の家の近くかあ」と、その辺りの地理に詳しい良太は、彼女の家を見た覚えがあった。
菅谷もこの春に転校して来たばかりの女の子だった。星野冴子がやせ型なのに対して、菅谷のり子は丸ポチャだった。デブとまでは行かなかったが、ヤセ・デブコンビで菅谷と星野は初めから仲が良かった。
この「お化け話し会」も二人が発案したものだった。夏休みにもほど近い、暑い日が続く最中、気分だけでも涼しくなろうとしたのだ。
「冴子んちの二階って広いよね。7~8人ぐらいだったら座れるかな」と菅谷は切り出した。
「え、うちで何かする気なの」と、いつも突拍子もないことを言い出す、のり子に冴子は警戒した。
「実はね、皆で集まって、怖い話しでもしようかなって考えてるの。どう乗らない」と菅谷は、いたずらっぽい目つきをした。
「うん、乗っても良いけど来る人いるの」
「大丈夫よ、もう目ぼしい人には声かけたわ。みんな興味がありそうよ」と行動派の菅谷は手回しが早い。
「相変わらず手早いのね。で、のり子、本当の目的は何なの」と星野は、裏に何かあると直感していた。
「別に何もないわよ。あまりに暑いから涼しくなりたいだけよ」と菅谷はお茶を濁した。
「私にはちゃんと分かってんのよ。山口君が目的なんでしょ」と星野はズバリ目当てを言った。
「いえ、それは偶々そうなっただけよ。成行きよ」とさかんにごまかしている。
「いいのよ、あたしだって彼には興味があるんだから」と星野もまんざらではなさそうだった。
山口も転校生の一人だった。良太にとっては口惜しいことだったが、男にしろ女にしろ、転校生は質が高かった。女であれば可愛い子が多く、男であれば恰好良い子が多かった。今までいた在校生は誰もが、転校生の前では不思議とくすんで見えた。
7に続く

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良太の冒険5

その5)
(飛び降り)
男の子供は運動神経や勇気を誇ることが多い。ただし勇気は眼で見えないから比べようがない。だから男子は人ができないことに挑戦して、勇気の度合いを測るものだ。良太は高い所から飛び降りることで勇気を誇っていた。
当時の小学校の階段は板敷きで途中、踊り場があった。上の階から踊り場まで十段ぐらい、そこでUターンする形で、残りの十段が下の階に通じていた。子供たちの間では、踊り場まで何段抜かしで階段を飛び降りられるかが競われていた。
良太は飛び降りには自信があった。多分、誰にも負けたことはなかった。
「神崎、僕は5段飛ばししたよ」と言われると、彼はすぐむきなって、6段飛ばしに挑戦した。その意味で負けん気は強かった。母親ゆずりだった。
ついに十段飛ばしに挑戦する日がやって来た。それは上の階から踊り場まで一ッ跳びで飛び下りることを意味した。上から踊り場を改めて見ると遠い。良太は足が震えるのを感じた。
「神崎、止めといた方がいいよ。足でも折ったら大変だよ」と友人は言ったが、良太の耳には入らなかった。実は隣のクラスの山田が9段飛ばしに、さっき成功したばかりだった。ここで止めるわけには、いかなかった。良太は意地になっていた。
彼は階段の角につま先を引っかけ、膝を曲げて一気に空中を飛んだ。一瞬の内に踊り場に着地していた。ほんの少しで最下段の角が尻に触れそうだった。ワックスで光った踊り場に着地した際、力んだ利き足が多少すべり、右手をつき、くじきそうになった。良太は右手首に痛みは感じたものの、十段抜かしを成功させた喜びが痛みを消し去った。
良太がそんなにも階段飛びにこだわるのには、もう一つの訳があった。転校生の星野冴子を意識していたのだ。
―この階段飛びに成功すれば星野にも自慢できるぞ。
 彼は彼女の気を引くためには、どんなことでもしてやろうと思っていた。彼は以前までは藤井宣子に思いを寄せていた。ところが先月、転校して来た星野冴子に今では心を奪われていた。それほどまでに良太は女の子に対しては、目移りがしやすいタイプだったのだ。
 今、良太は学校が終わってヨッチンたちと一緒に瀬田ハウスに来ていた。
瀬田ハウスのガレージは坂の途中にあった。と言うより瀬田ハウス全体が坂の途中にあったと言う方が正確だろう。ここには外人が住んでいた。良太とヨッチンとエミコたちは、良くこの付近で遊ぶことが多かった。ガレージは子供たちには途方もなく大きく見えた。普段そこに車が入っていることは稀だったが、時に外車が置かれていることがあった。キャデラックやシボレーであった。車自体が珍しい時代であったので、外車の大きさには圧倒されたものだった。
曲がり角に瀬田ハウスの入口があった。昼間は門が開かれていて、良太たちは自由に出入りしていた。辺りに人影はない。住んでいる外人に出会うことは滅多になく、外人の子供たちさえ見かけることはなかった。
門を入って左の植え込みを越えると、コンクリートの広いベランダが続いていた。実は、そのコンクリートの部分がガレージの屋根に当たっていた。だから、そこには柵も手すりもなかった。
辺りを気にしながらも、良太はヨッチンたちと瀬田ハウスの中へ入って行った。そして芝生の上を通り、ベランダまで行ってみた。
「おい、こっから下の道路まで何メートルぐらいあるかな」と良太は屋根から下をのぞき込みながら言った。
「恐らく2メートル以上はあるだろうな」とヨッチンは恐る恐る下をのぞき込んだ。
ガレージは坂の途中にあるので、向かって左側の屋根の部分は割合、道路と近いが、右側に行くに従って、屋根と道路との距離は広がる。左側では飛び降りるのは楽だが、右の方は子供の背丈の倍ほどの高さから道路に飛び降りることになる。
瀬田ハウスガレージの上から下の道路を見下ろした良太の足はガタガタ震えていた。
―もし、この場に星野冴子がいたら、こんな高さは何でもないんだがなあ。
もし俺が足を折りでもしたら、彼女は悲しんでくれるだろうか。
 彼は自分勝手な空想を拡げるのだった。
―少なくとも、ここから飛び下りられれば、クラスで自慢できる。そうすれば星野冴子も俺に注目するだろう。
 結局、彼が飛び下りようとする最大の動機は彼女だったのだ。
良太の中では、はるか彼方の道路の映像と彼女の面影が重なり合った。
―もう、これは飛ぶしかない。
決意した彼は、ガレージの屋根を思い切り良く、踏み切った。空中にいる時間が長く感じられた。彼の身体は宙を舞うように落下した。夢のような浮遊状態を足の痛みが現実に引き戻した。着地の足の痛みは思った以上に強烈なものだった。良太は一瞬、足が折れるかと思ったほどだった。ところが普段から階段跳びで鍛えていたことが効を奏した。良太の小さい足は彼の全体重の二倍以上ある衝撃を見事に支え切ったのだ。
6に続く

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良太の冒険4

その4)
(教会の謎)
「神崎君、遅かったんで気がもめたよ。君、顔が真っ青だよ。中で何があったの。どんなとこだった。誰かいたの」と倉品は矢継ぎ早やに質問を浴びせかけて来た。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。いきなり、そんなに聞かれても、すぐにはいっぺんに答えられないぜ。順を追って話すから、もう少し休む時間をくれるか」と良太は額に冷汗をかき、未だ息が整わない様子だった。
「分かったよ。君は少し休んだ方が良いみたいだ」と倉品は聞きたい気持ちをぐっとこらえていた。しばらくして良太の汗が引いて来た。
「倉品、お前も来れば良かったのになあ、ロウソクが並んでいて、神秘的だったぞう。お前が一緒なら、俺ももう少し先まで行けたような気がするよ」とその時は、いつもの元気な良太に戻っていた。
「中、暗いんでしょ。僕は薄暗いとこは苦手なんだよ。今度はヨッチンやエミコを誘えば良いよ」
「そうだな、ヨッチンとエミコの双子兄弟なら恐いもんなしだろうな」
「ところで、中の様子はどうだったんだい」と倉品が知りたがるので、良太は概略を説明した。
「すると奥の方には、さらに通路がある可能性が高いね。聖ピエトロ教会の地下につながってるって話は、まんざら嘘でもなさそうだね」と彼は臆病なくせに、地下道には心を魅かれているらしい。
「何でここと聖ピエトロ教会がつながっていることに、お前はこだわるんだい」と良太は倉品の態度が解せなかった。
「これは二人だけの秘密にしておいてほしいんだけどね。地下通路のどこかに防空壕への抜け道があってね、そこに戦時中の遺留品や貴重品が残っているらしいんだ」と倉品は声をひそめて言った。
「そんな宝は敗戦後、とっくの昔に掘り出されているのと違うのかい」と良太は馬鹿らしいと言いたげに、地声の大声で聞き返した。
「あまり大声を出さないでよ。誰が聞いているとも限らないからね。その防空壕というのが、実は当時、聖ピエトロ教会の敷地内にあったそうなんだ」
「今でもそのカトリック教会は立ってるじゃないか」
「今の建物は戦後、新たに建てられたものらしい。古い建物の時に防空壕が作られたので、今はその場所がどこだか分からないんだ」
「お前、やけに詳しいな。一体、誰からその情報を得たんだ」と良太は知らず識らずの内に、倉品の話に引き込まれて行った。
「僕のおじいちゃんが実は、昔そのカトリック教会に所属していたんだ。そして地下道のことを叔父さんに何度か話したらしい。父の兄に当たる叔父さんだよ。叔父さんは熱心な信者ではなかったけど、たまにおじいちゃんと一緒にミサに出たことはあるということだ。それに比べて僕の父は無神論者だったから、教会とは全く縁がなかったんだ」と倉品はここで一息入れた。
「何か複雑な関係だな。俺は聞いてても良く分かんないよ。それで結局、その宝についての情報はどうなったんだい」と良太は親戚関係など、どうでも良く、宝だけに関心があった。
「そう先を急ぐなって。僕も頭の中を整理しながら喋ってるんだから、ちょっと待ってよ。以前おじいちゃんが生きてた頃、聖ピエトロ教会で古文書の整理をしたことがあったんだ。その中に戦争中の出来事が記録された文書が見つかったそうだ。その中に防空壕のことやそこに隠されていた宝のことが書かれていたらしい。叔父さんが小さい頃、その話をおじいちゃんから聞いて、自分でも教会の地下蔵書庫に行って調べたことがあるらしい。でも何も見つからなかった。結局、今になっても発見できていないんだ」と倉品が言う頃には、辺りに夕闇が迫っていた。
「そろそろ帰ろうよ。自転車を押しながら話すことにしよう」と彼は先に歩き始めた。
「ちょっと待てよ、倉品、お前は帰る時は素早いんだからな。さっきの話だけど、お前の叔父さんが一番詳しい情報源みたいだな」と良太はすぐ、倉品の後を追った。
二人は玉川霊廟の門を出て、治太夫掘に沿って歩いた。前方はるか山間には正に夕日が沈もうとしていた。辺りは黄金色に染まっていた。良太からは地下道で味わった陰鬱さが、夕日の輝きで消し飛ばされていた。二人はしばし無言で歩いた。すぐの角を右に曲がると目の前には急坂が迫っていた。自転車を押しながら、やっと登れるほどの急坂である。しばらく行くと、左に玉川神社の境内へ通じる長くて急な階段があった。そして坂の右手には、聖ピエトロ教会の高い塀が巡っていた。
「おい倉品、俺たちだけで今度、この教会に忍び込んでみないか」と良太は高い塀を見上げながら突然、口を開いた。
「えー、何言ってんだよ、それはヤバイよ。僕は行きたくないな」と倉品は初めから及び腰であった。
「大丈夫だって、何も正面から忍び込むんじゃないんだよ。俺は瀬田ハウスからの通用口があるって聞いたことがある。そこからだったら、怪しまれずに入れると思う」と良太は既に忍び込む気になっていた。
「正面からだろうが、横からだろうが、僕はあの教会に忍び込みたくないよ。きっと祟りがあるよ」
「キリスト教に祟りなんてないよ。祟りは神道か仏教じゃないか」と良太はまるで取り合わなかった。
5に続く

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良太の冒険3 [ショートショート]

その3)
(霊廟の奥には何が)
良太と倉品は玉川霊廟がある赤茶けた門の前に立っていた。二人はその門をくぐると、地下墓地への入口階段前にしばし佇んだ。そこには既に異様な霊気が漂っていた。良太が地下階段まで近づき、奥を覗き込むと薄暗い中に、何本ものロウソクが火を揺らめかせながら立てられていた。良太が奥へさらに一歩踏み出そうとした時、倉品はオドオドした声をしぼり出した。
「神崎君、今日は入るのは止めとこうよ。ここは何とも言えず不気味な雰囲気がするよ。実はさっきから鳥肌が立ってるんだ。誰にも断らず、勝手に入るのも問題があるだろうし」と倉品は色々、言い訳を並べ立てた。
「倉品、お前、何ビビってんだよ。行くのが嫌なら、俺一人でも行って見てくるぜ」と良太は血気盛んであった。
「じゃ僕はここで待機してるから、何かあったら大声で叫びなよ」と倉品は安心した様子で答えた。
「大声で叫べば、お前、助けに来てくれるのかい」と良太は意地悪い質問をした。
「その時は、僕が誰かに助けを呼びに行くよ」と倉品の答えは、いたって頼りない。
良太は意を決し、薄暗い階段を用心深く下りて行った。階段は思ったほど急でなく、すぐ細く平坦な通路に続いていた。天井は圧迫するように低く連なっていた。階段の降り口付近で、ゆるく右へカーブした後、通路はそのまま真っ直ぐ伸びていた。
―うわあ、ロウソクが何と整然と並んでるんだ。
 良太は地下通路に立つと、内部の景観にびっくりした。通路の壁だと思っていた部分には、近づいてみるとロッカーが整然とはめ込まれていた。ロッカーの中身に思いを馳せた時、彼の背筋に冷たいものが走った。
―この中には人骨が入ってるんだ。
 彼は改めて、自分が墓地の真ん中にいることを実感した。ロッカーの表面をつぶさに見ると、“堀の内霊妙居士”といった戒名が刻印されていた。先から感じていた異様な霊気の正体が今、現実のものとなった。「南無阿弥陀仏」と良太は思わず、念仏を唱えてしまった。彼は仏教徒ではなかった。なのに、こうした場面では念仏が何故か似合う。
 地下通路は限りなく続いているように見えた。奥が暗闇にまぎれていた。
―この通路は本当に聖ピエトロ教会の地下とつながっているのだろうか。
 良太はやっと今回、ここに来た目的を考える冷静さを取り戻した。あたりはあまりにも静かだった。自分の心臓の鼓動さえ聞こえてきそうだった。すると、どこからか水がポタポタ滴る音が、かすかに聞こえて来た。彼にはその音が、どうやら通路のずっと奥の方から聞こえて来る気がした。
―今日は音のするところまで歩いて行ってから、戻るとするか。
 良太は自分の気持ちを鼓舞させていた。地下通路を先へ進むほど、あたりはじっとり湿っぽい空気に包まれていた。ひんやりとはしているが、肌はべとつく感じだ。
―冷汗のせいだろうか。
ロウソクの火も心なしか勢いがない。消えかかっているロウソクが目につく。完全に消えてしまっているロウソクも何本かある。
―奥が暗かったのは消えているロウソクが多かったからなんだ。
ロウソクは命の灯を象徴していると言われる。
―ここに灯されたロウソクも、誰かの寿命を象徴してるんだろうか。
 何本ものロウソクを間近に見ながら、彼は人に割り当てられた寿命に思いを馳せるのだった。昔、祖母から聞いた地獄の情景が、ほうふつとして来た。
―地獄では確か閻魔大王が、人の命を取り仕切っていたっけなあ。太いロウソク、細いロウソク、長いの短いの、人の寿命はそれぞれのロウソクで管理されているって言ってたな。
 良太の眼には、目の前のロウソクが次第に地獄のロウソクとダブって見えた。ここに来て、良太の今までの強気はどこかに吹っ飛んでしまった。
―俺はこんな、とんでもない所に足を踏み入れて良かったんだろうか。こんなとこにいるだけでも罰当たりなことなんじゃないか。
 良太はしきりに自問した。初めて、彼の顔に反省と不安の表情が浮かんだ。弱気になると彼の心はもろくも崩れて行った。
良太の目の前には、父や母の顔が浮かんだ。それと同時に、この地下墓地に埋められている人々やその家族たちの顔が浮かんで来るように思われるのだった。
―俺は踏み込んではいけない場所に足を踏み入れてしまったようだ。
 彼は生と死の重さをいまさらのように感じた。
胸に圧迫感を覚えた良太は、駆け出すようにして出口の方へと引き返した。
4に続く

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良太の冒険2

その2)
(下見)
良太は片手で試験管を持ちながら、自転車を倉品の家に走らせた。家の前に着くと、いつものように「倉品君、遊ぼ」と大声で家、全体に呼びかけた。しばらくすると、玄関のドアが開いた。
「あー神崎君、ちょっと待っててね。光隆は今、宿題してるからね。もう少しで終わりますよ」と倉品の母が、ドア越しに声をかけた。しばらく待つと倉品が戸口に現われた。
―倉品の奴、こんな時間から宿題なんかして何、考えてるんだ。
「やあ、お待たせ。君は来るのが早いね」と彼はおやつを食べながら、口をモゴモゴさせていた。
「ああ、俺は宿題を夜やることにしてるからな。学校から帰ったら、すぐ出て来たんだ。途中駄菓子屋に寄って、栄養補給して来たよ」と良太は黄色く染まった舌を出して見せた。
「何だ、その色は」を倉品は見慣れない毒々しい色にびっくりしていた。
「これから玉川霊廟に行ってみないか」と良太は切り出した。続けて、
「お前、この間、玉川霊廟と聖ピエトロ教会は地下道でつながってるらしいって話してたよな。そのことが俺の頭にずっと引っかかってたんだ」と彼はまだ、舌をペロペロさせていた。
「うん、僕も親戚の叔父さんから聞いた話で、確かなことは言えないんだけどね。昔の防空壕の跡がつながってるらしい」と金縁のメガネの奥を光らせた。
「きっと地下道があるはずだよ。行ってみようよ」と良太は気がせいてたまらなくなった。
「僕はあまり気が進まないけど、つき合いで行こうか」と倉品はしぶしぶ首を縦に振った。
倉品の家や良太の家の付近は多摩丘陵地帯だった。その辺り一帯は高台になっており、河川敷へは急勾配の下り坂がつらなっていた。二人は自転車で玉川神社の横を通り過ぎた。ここは地域でも盛大な秋祭りが行われる神社だ。良太は毎年、祭りは欠かしたことがなかった。アンズあめやたこ焼きが好物だった。射的や型抜きも好きだった。その参道入り口を右に見ながら急坂を一気に下る。
「わあー」と大声を出しながら、二人は急坂を下った。良太はそのスリルがたまらなかった。坂を下りきるとすぐ、寺太夫掘という川が流れていた。川と言っても、用水路のような川である。その川で良太は笹舟流しをして遊んだ。舟の後をどこまでも自転車で追いかけて下流の方まで行った事もあった。そこにかかる橋の手前を左折すると、すぐ先の左側に玉川霊廟はあった。
3に続く

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良太の冒険1

その1)
(駄菓子屋)
良太は店から入ると、座敷の畳の上にランドセルを放り投げた。そして奥にいる母親に声だけかけた。
「ただいま。行って来ます」と帰りと、出かける挨拶とを同時にしたのだった。
「良太、お菓子があるわよ」と美佐子が呼びかけた時には、彼の姿はそこになかった。
良太にとって家で食べるおやつより、駄菓子屋で買う駄菓子の方が魅力的だったからだ。でも担任の先生にはよく言われたものだ。
「神崎君、駄菓子をあまり食べてはいけませんよ。栄養もないし、どんな添加物が入っているか分からないですからね。砂糖の代わりにサッカリンというものまで入っています。それに比べ、お菓子屋さんのお菓子は衛生的だし、栄養価も高いんです」
良太はそれを聞き流した。
―栄養がなくてもうまい方がいい。どうも学校の先生は衛生面にこだわり過ぎる。子供の嗜好が分っちゃいない。俺たちの心が分かっちゃいない。
良太は常にいくらかの小銭を持っていた。月々の小遣いは決められてはいたが、親にせびるとお菓子代ぐらいは簡単に出してくれた。彼の親は甘かったのかも知れない。
―俺の親は子供の気持ちを分ってくれてるなあ。行動にあまり規制もかけず、自由に振舞わせてくれてる。僕を信頼してくれて有り難いんだよなあ。
キセ駄菓子屋は行きつけの店だった。表通りに面していて、隣は良太の家と同じ洋服店だった。親も馴染みの店なので、よくオマケをしてくれた。普段はおばさんが店番をしていた。
「こんにちは」
「ああ、いらっしゃい。もう学校は終わったの。早いねえ」
「うん、家にかばんを置いて、すぐここに来たんだよ」
 良太は店に入るなり、奥まで進んで行った。
―今日はくじで運を試してみよう。
 良太も子供なのでごたぶんに漏れず、クジが好きだった。竹ひごが束になって、筒にささっていた。そこから一本を抜くのである。一回5円。
「おばさん、スカだ」と彼はがっかりした声を出した。竹ひごにしるしのないのはスカである。先端が赤く、紅染めされているのが当たりであった。
「スカかい。じゃ、こっちの短いのから好きなのを選びな」おばさんは、短いガラスの試験管に毒々しい色の流動物が入った駄菓子を差し出した。
「じゃ、この黄色いのにするよ」と言って、良太は一本取り上げた。彼はそうしながらも、その倍の長さがある長い方の当たり試験管を物欲しそうに眺めていた。
―何で僕はくじ運がないんだろうなあ。オマケしてくれると嬉しいんだがなあ。
 良太の切な思いがおばさんに伝わったらしい。
「良ちゃん、あまりしょげないでよ。もう一回引いてごらん」とおばさんは優しく声をかけた。
「ありがとう。じゃあ、引くね」
 もう一度竹ひごを引くと何と先端が赤く紅染めされていた。
「おばさん、当たりだよ」
「おお、良かったね。じゃあ、ここから長いビンをお取り」
「じゃ、このオレンジと黄色のにするね」
「はいよ、短いのもオマケであげるよ」
「どうも、ありがとう」
そう言うと良太はその場で試験管に竹ひごを突っ込み、グルグルかき混ぜると黄色いドロドロの流動物が、竹ひごの先端にべったりとくっついていた。それを引き抜いて、彼は舌の先でペロペロなめた。甘酸っぱい味が舌の先一杯に広がった。彼の舌の先は着色剤のせいで、黄色く染まっていた。
「じゃ、また来るよ」と言って、彼は駄菓子屋を後にした。
「またおいでね」と愛想の良いおばさんの声が後ろでした。
―今日はラッキーだったな。オマケもしてもらったしな。
2に続く

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自転車 最終回

最終回)
大蔵ランドから多磨動物園までの距離は長いが道順が単純なのでこうして来れたのだと思う。左折・右折が殆どなく、道なりに進めば良い。坂を登り終えるとなだらかな下り坂が続いた。汗をかいた体に涼しい風が心地良かった。遠くに川が見える。山道を越えると街中に入った。車の数が増えて来た。高幡不動の町を通り過ぎたのだけ良く覚えている。後もう少しで左折する場所がある筈だ。‘あった。’多磨動物園の表示とともに左折の矢印がある。健次は安堵で胸をなでおろした。もうここまで来れば目標を目指すだけだ。あと直線距離にして2キロほどで動物園に到着する。辺りは既に夕暮れに近づいて来た。健次の心は目的地が近くに迫った喜びで一杯だった。足の筋肉はは疲れではちきれそうで、呼吸も苦しかった。残りの道のりをもうすぐ到着する動物園の正面玄関を思い浮かべながら健次は自転車のペダルをこいだ。緩やかな上り坂が続いた。
そしてとうとう多磨動物園の正面玄関が見えるところまで来た時、健次の心にはすごく大きなことをやり遂げようとしている自分に誇りを感じた。バスか電車でしか来たことがない場所に一人で自転車できた自分がひどくたくましくさえ思えた。やっと動物園の正面まで辿り着いた。辺りは夕焼けに染まっていた。
到着して喜びをかみ締める間もなく帰路につかねばならなかった。既に5時は過ぎていたので家に到着するのは大分遅くなると予想できた。到着した喜びをかみ締めると同時に今来た同じ道のりを帰る不安が心を満たした。元気でいようとするのだが疲れがじわじわ迫って来るのを感じた。帰りの道は来た道を反対に辿れば良いからそれほど困難ではない。でもこれから夜が来る。見知らぬ土地で一人で夜を迎えるのは恐かった。しかも手持ちの金は20円しかない。
早く家に帰りたい気持ちが健次の心に急激に湧き上がって来た。美味しい夕食。今晩は何だろうか。好きなカレーかハンバーグか。それより心配して待っている親が気にかかった。夜がふけてから帰るのは初めてではなかったので大げさに心配はしないだろうが、自転車で多磨動物園に一人で来て、暗くなりかかっている川崎街道を走っているのを知ったらさぞかし驚くだろうと健次は思った。早く無事に帰って安心させてやりたいと思った。
川崎街道の夜道を走っていると色々な記憶が蘇った。瀬田の交差点に住んでいた頃に近くにガラス屋があった。そこの兄さんは脚力が抜群だった。当時は自転車の後ろにリヤカーをつけて硝子を運んでいた。ある晩、その兄さんはリヤカーに近所の子供たちを5,6人乗せて夜のサイクリングに出かけた。健次もその内の一人だった。その兄さんは自転車をこいで今のファミリーパーク辺りまで行った。途中、急坂があったがそれを物ともせずどんどん進んでいった。夏の夜の夕涼みには最適のサイクリングだった。
高幡不動の町を通り過ぎると山あいの道に入った。夜になり森の中はさらに暗い。行きに通った時とは大違いで恐い。車の通りも少なくなったので暗さが倍増した。街灯も殆どない。幸いなことにそこは緩やかな下り坂だったので健次は猛スピードで下って行った。後はずっと直線が続く。
川崎街道を左折し、世田谷通りに入った。辺りはすっかり暗い。多摩川の橋を渡ると健次はペダルに力が入るのを感じた。もう少しで家に帰れる。これほど我が家が恋しいことは今までなかった。我が家の素晴らしさをしみじみ感じた。暖かいご飯と冷たい飲み物が待っている。気持ちの良い風呂が待っている。それにも増して健次を喜んで出迎えてくれる親がいるのがこれほど嬉しく感じたことはなかった。家が近づくと健次はすっかり安心して持っていた20円でアイスキャンディーを買った。その美味しかったこと。その冷たかったこと。一生忘れられない味だと思った。
家に帰ると思っていた通りに親は喜んで出迎えてくれた。多磨動物園に行って帰って来たと聞いて二人とも大層驚いた。その晩の食事は最高に美味しく、風呂は最高に気持ち良かった。

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自転車2 [ショートショート]

その2)
世田谷通りは車道と歩道が分かれているので走りやすかった。やがて多摩川にかかった橋を渡った。遠くを見ると川面が日の光でぎらぎら輝いている。渡るとすぐに川崎街道にぶつかった。右へ曲がると後は真っ直ぐだ。この通りはトラックが多くて恐い。しかも歩道と車道が分かれていないので自転車で車道を走ると横を猛スピードでダンプカーや大型トラックが通り過ぎて行く。通り過ぎる時、強い風圧を感じる。健次はバックミラーを見ながら通り過ぎるトラックの様子をうかがった。この通りは砂埃が激しい。前だけではなく、後ろにも注意を払わなくてはいけないので気が休まらない。午後の日差しは強くまぶしい。左右に梨園が広がっているが、健次の目には入らなかった。
自転車で走る間に色々な出来事が頭に浮かんだ。その頃、健次は塾に通っていた。ある時期まで、健次は中学受験を考えていたこともあった。自宅の二階を改造した塾で生徒数は10名ほどだった。ある日、授業中に急に腹が痛み出した。トイレに行けば治ると思ったが、先生に言って帰ることにした。下りそうだったので自転車を飛ばして急いで帰ったことが頭に浮かんだ。
川崎街道をさらに走り続けると途中山あいの道に近づいた。暑いので上り坂はきつい。三段変速の自転車なのでギアーを緩めて懸命にこいだ。坂の途中で自転車を降りて歩くことはいやだった。この頃から引き返したい気持ちが少し出て来たが、その思いを振り払うようにペダルをこいだ。途中で止まると後がきついので休みは取らなかった。頂上辺りに近づくと道の両側には背の高い木が生い茂っていた。午後まだ日が高かったがそこを通る時は薄暗かった。帰りは多分暗い中を再びこの森を通るのかと思うと少し心細かった。その頃には日は大分、西に傾いていた。
何が健次をここまで駆り立てていたのだろう。
中学受験のために自分の時間が思うように取れなくなっていた。好きな模型作りも制限された。学校の授業にも興味が薄らいで来た。担任の先生は1年の時からずっと変わらないのでマンネリ化していた。最近、転校生が来た。滝口と言う真面目でリーダーシップがある男だった。担任教師は健次より滝口に注目し始めていた。健次は注目を引こうといたずらをすることも多くなった。ある時、学級会で健次は吊るし上げられた。
それは朝会でのいたずらが原因だった。健次の履き古された運動靴の先はゴム底が剥がれていた。剥がれた部分に砂を入れて友達に向け足を振り上げた。するとうまい具合にその砂が小宮山の体に降りかかった。小宮山は嫌がっていた。
「健次。止めろよ。砂が目に入ったらどうすんだよ。」
「顔には向けないから大丈夫だよ。」そう言って健次は尚も砂を飛ばした。
たまたま、その午後に学級会があった。会が終わりに差し掛かった頃、小宮山が手を上げた。
「今朝、佐久間君は靴に砂を入れて人に向けて飛ばしました。」
健次は‘しまった’と思った。ここでその話題が出るとは予期していなかった。とっさに健次は言った。「僕はやってませんよ。」
すると小宮山以外の皆も「佐久間君は靴に砂を入れて飛ばしていました。」と一斉に言い始めた。
健次は皆を敵に回したようで急に悲しくなり涙ぐんでしまった。その時、終業のチャイムが鳴った。
最終回に続く

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