夢解析器29 前編

前編
「こんにちは、今日は曇りで過ごしやすいですね」A氏は何かしら吹っ切れた様子で入って来た。
「こんにちはAさん、昨日は来られませんでしたね。昨日は暑かったですが今日は割合、涼しいですね。今日はすっきりされてますね」受付嬢は饒舌だった。
「はい、昨日は休みだったので、雑用をしていました。休みだったのですが、あちこち出歩いていたのでこちらには伺えませんでした」
「何か良いことはありましたか」詮索好きの彼女はついA氏の行動が気になるのだった。
「良いこともあり、がっかりすることもありました。良いことは息子のパソコンの電気が入らなくなったというのでコジマに持って行ったところ、電源をリセットしただけで直りました。何の異常もありませんでした」
「それは良かったですね」
「悪いことは面接で職が得られなかったことです。アルバイトをしようと運送会社の早朝仕分けの職探しで面接に行ったのですが、現在募集してないと断られました」
「それは残念でしたね。Aさん、本業の他にどうしてアルバイトまでされるのですか」
「今の収入では家計が成り立たないからです。今は懸賞小説に応募したりして賞金を目当てにしてるのですが、手っ取り早く現金が欲しくなったのです。息子たちの教育費が賄い切れなくなって来たのです。そこで当座、アルバイトで資金稼ぎしようと考えたわけです」
「子供さんが大きくなると大変なんですね」受付嬢は他人事のようにつぶやいた。
「昨日は取り立ててはっきりした夢は見なかったのですが、寝起きの状態についてお聞きしたいことがあったのです」A氏はやっと本題を切り出した。
「分かりました。それでは奥へいらして下さい」
受付嬢は廊下奥の緑の扉へと彼を導いた。
A氏が部屋で待っているとドアにノックがあり、心理士が入って来た。
「こんにちはAさん、お忙しいですか」
「いえ昨日、休みだったのですが仕事が溜まっているわけではありませんでした」
「良い職場ですね。ご自分のペースで仕事ができそうですねえ」
「全くその通りです。精神的プレシャーを余り受けなくて済みます。これで給料がもう少し高ければ言うことはないのですがねえ」
「それはAさん、贅沢と言うものです。バチが当たります。収入は他の手立てを考えるか、支出を削るしかありませんね」心理士は金に関してはキッパリとした言い方をした。
「それは分かりますが、支出に見合う収入を得るのはなかなか難しいことなんですよ」
「金にまつわる夢なども見られますか」
「いや、不思議と金に関係した夢は見ないのですよ。銀行預金はいつもマイナスで借金も2-300万円あるんですが、夢の中で金に困ることはないのです。起きている間も悩むのは一時だけで普段、あまり金の心配はしないのです」
「Aさんはお金に対して無頓着なのでしょうねえ」心理士は微笑んでA氏を見た。
「そうかも知れません。昨日も収入の道が閉ざされて一時はどうなるかと考えましたが、『何とかなる』と思い直したら心が落ち着きました。そしてほとんど夢も見なかったのです」
「夢を見られなかったら相談事もないと言うことですか」心理士は機器をセッティングする手を休めてA氏に向き合った。
「それがですねえ、確かな夢は見なかったのですが、朝のまどろみの瞬間、良く分からない心の動きがあったものですから、先生に解析をお願いしようかと思いました」A氏は心理士に対し言い訳をするように理由を話した。
「そうですか、分かりました。では今朝の夢の様子を見てみましょう」彼女は機器のボタンを操作してA氏の起床前の夢をモニターに映し出した。
するとモニターには彼が覚醒する前に見ていた夢が薄ぼんやりと映し出された。
「映像が余りにも薄くて本当に何の夢か分かりませんねえ」心理士も映像を全く判別できない様子だった。
「僕もこの時に見ていた夢はどう思い起こしても思い出せないのです。ところごあ4時過ぎに目覚めた時、意識が働き出し夢の世界とオーバーラップしてしまったのです」

nice!(0)  コメント(0) 

夢の検証322

夢の続き

G工業の事務所でB病院のI曹長がノートを貸してくれた。団体交渉に臨む上での参考資料が載っていた。技術者の賃金が膨大だった。新製品開発で労働時間が極端に増えていた。そのノートを持って外出したら不覚にも近くの沼にはまってずぶ濡れになった。ノートも水浸しで絞ると水が滴った。中の写真がボロボロになり追加で書く部分が毛羽立ってしまった。

検証322
G工業とB病院が何の関連もないのに一緒に登場した。かつて組合活動を予期せずしていたので団体交渉の場面は懐かしい。今では全くうんざりした瞬間だった。資料作りも殆ど手作りで行っていた。


nice!(0)  コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。