夢解析器28 前編

前編
「こんにちは」A氏の挨拶は元気がなかった。
「こんにちはAさん、お疲れのようですね」受付嬢は彼の様子が気にかかった。
「ええ、少し疲れています。昨日、田舎から帰ったばかりです」
「Aさん、先週も帰られましたよね、二週間続けてですか。さぞお疲れでしょうね」
「はあ当分、車は運転したくないです」
「そうでしょうねえ。昨夜はゆっくりお休みになれましたか」
「はい、ぐっすり眠りました。でもまた変な夢を見たのです」
「運転の夢でも見られたのですか」
「いや全く違います。猫の夢です」
「え、猫ですか。詳しいことは奥でお聞きしましょう。さあどうぞ」
受付嬢はA氏を廊下奥の緑の扉へと導いた。
A氏は検査室の中でしばらく待つとドアにノックがあり、心理士が入って来た。
「こんにちはAさん、お待たせしました」
「こんにちは、先生はいつもお元気そうですね」
「挨拶で自分を元気づけているようなものですよ」
「いつもその元気さを分けてもらって有難うございます。僕も少し元気が湧いて来ました」
「Aさん、お疲れですか。どんな夢を見られたのですか」
心理士は手際良く機器をセットし終わった。
「一泊で田舎へ行ったもので少し疲れが溜まってました。昨夜は久々に夢に動物が出て来ました」
モニターにはやがて、やたら飛び跳ねる動物が映し出された。
「何ですか、この元気過ぎる動物は」心理士もその跳躍力に唖然としていた。
「これは猫ですよ。僕の姉が飼っている『モモ』という名の猫です」
「モモちゃんはそんなにも跳躍力があるのですか」心理士は事実を確認した。
「とんでもないです。メス猫で栄養がつき過ぎて、とてもジャンプなんかはできないのです」
「このモニターでは1-2mもジャンプしてますわ」
「それが不思議なのです。僕は椅子の上に乗って、彼女が飛びかかって来るのをよけようと必死なのですが、どうやっても飛びつかれて噛むは引っかかれるはしてしまうのです。現実では全くあり得ないことです」
「その猫とは普段から接触しているのですか」
「昨夜は姉が旅行中だったのでモモは一匹で部屋にいたのですが、淋しかったらしく僕らの部屋にまで入って来ようとしていました。そこで僕は彼女を抱き上げて猫缶を食べさせてあげたのです」
「それではモモちゃんと普段から係わりはあるのですね」
「そうですね。一週間に二度ぐらいは頭を撫ぜたり抱いたりしています」
「その猫が何故、Aさんを襲うようなことをしたのか不思議ですねえ」
「そうなんです。僕は彼女を一度もいじめた憶えはないんですがねえ。何故、夢ではいきなり凶暴になったんですかねえ」二人は頭を抱え込んでしまった。
しばらくすると台所のコンロが映し出された。
「あ、これは先の猫事件とはあまり関係がないのですが、建て替える前の僕の家です。一階に台所があり、僕は朝食の準備をしていたのです」
「この部屋はあなたがさっきモモちゃんに飛びつかれていた部屋に似ていますね」
「はあ、もしかしたら同じ部屋かも知れません。僕の夢には昔の家の台所が良く出て来るのです。そこで炊事したことなど殆どないのですが、夢ではお湯を沸かしてコーヒーをいれていました。それも空缶を容器にして作っていたのです」
「空缶に熱湯を入れたらさぞや熱かったことでしょうねえ」心理士は現実的な問い掛けをした。
「そう、その通りなんです。熱湯を注いだ空缶は熱過ぎて触れることもできない状態だったのです」
モニターには湯気が立ち上るコーヒー缶を左手で熱そうに押えながらも、右手のスプーンで中味をかき混ぜている様子が映し出されていた。

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夢の検証321

夢の続き

高校時代の級友オガミノの下半身が汚物で濡れていた。気付かないで接触しシャツやズボンを汚してしまった。着替えるために自分の部屋に行ったが適当な服がなかなか見つからないので焦りを感じた。友達も探すのを手伝ってくれたが無意味だった。
やっと着替えて外に出た。小さなワンボックスカーに二人乗っていた。運転席についてエンジンを始動した。動き始め車の展示場に入ったがブレーキがないのに気付いた。何とか車を停止させて整備員に調べてもらったら欠陥車だと分かった。

検証321
オガミノ君とはそんなにも親しくはなく言葉を交わしたことも少なかった。それなのに失禁の話しが出るなんて不思議なことだ。上手い具合に着替えを持っていたかどうかも分からない。普通、学校に着替えは持って行かないものだ。
学校から車でどこかへ出掛けるのも何となく変な話だ。自分が運転することになるなんて割に合わない。ガリバーとか言う車の展示場では酷い目にあったことがある。安く買い叩かれた。

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