良太の冒険14

その14)
(砂ぼこり)
朝から風が強い日曜日だった。良太はこの日、砧公園に行きたかった。そのため朝から弁当まで用意してもらっていた。彼はやりたいと思えば、天候は気にならなかった。
昼近くになっても、風は一向に収まる気配がなかった。良太は出掛けることに決めた。親友の金子を誘うつもりだった。自転車を走らせると砂ぼこりが宙を舞っていて、先に進めなかった。
金子の家へ着くと、すぐに奥から彼が出て来た。良太はおもむろに言った。
「おはよう、予定通り、これから砧公園へ行こうか」
「え、この風の強い日にかい」と金子は驚いた様子だった。そして奥へ引っ込み、再び現れると
「母さんもこんな風の強い日には行かない方が良いってさ」と彼は全く外出する気がないようだった。
良太は愕然とした。もう、その場にはいたくなかった。彼は辛うじて一言言った。
「じゃ俺は帰るよ」
金子は彼がそんなにもガッカリするとは思ってもいなかったので、引き止めた。
「神崎、せめて家に上がって遊んでげば良いよ」
「いや、いいよ」と言いながらも、良太は急に悲しくなってしまった。眼から涙が出そうになるのを必死でこらえた。
「神崎、泣いてんのか」と金子は彼の眼を覗き込んだ。
「泣いてなんかいないよ。埃が目に入っただけだよ。じゃ、またな」良太はそれだけ言うのが精一杯で、そのまま駆け出していた。
家に帰っても悲しさが募るばかりで、砧公園に行けなかった無念さがこみ上げて来て、母親の前でも泣いてしまった。
15に続く

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