良太の冒険15

その15)
(決心)
最近、良太は気分が低調だった。転校生山口の人気が高まるにつれ、彼の存在価値は下がっているようだった。クラスでも次第に浮いた存在となり、邪魔者扱いをされるようにもなっていた。
彼は学校でのやり切れなさを埋めるために、何かしなくてはいけないと心を突き動かされていた。そんな時、再び、玉川霊廟と聖ピエトロ教会を結ぶ地下通路のことが頭をよぎった。
良太は昼休み、同じクラスのヨッチンに声をかけた。
「なあ、ヨッチン、今晩、聖ピエトロ教会に忍び込まないか」と彼は切り出した。
「え、神埼、急にどうしたんだよ。俺は夜、出歩けないよ」とヨッチンは面食らった様子だった。
「前に話したかも知れないけどな、あの教会と玉川霊廟は地下通路でつながってるらしいんだよ。俺は先日、倉品と玉川霊廟に行って、途中まで地下通路を探って来たんだ。今晩は教会からの通路を探そうと思うんだがなあ」と彼は一気にまくし立てた。
「夜、あの教会は門が締まってるぜ。門をよじ登る気かい」とヨッチンは不審気だった。
「いやなあに、瀬田ハウスから教会へ忍び込むルートがあるらしいんだ。今晩それを探したいんだけどな」
「そんな地下通路を探してどうするんだい」とヨッチンは怪訝そうな表情を見せた。
「地下通路の途中に財宝が隠されてるらしいんだよ」と良太は声をひそめた。
「ちょっと怪しいなあ。でも待てよ、今晩はガラス屋のサブちゃんがリヤカーに乗せてくれる約束があったんだ。それに便乗すれば、少しだったら、出歩けるかも知れないよ」
「よし決まった。夕食後、ヨッチンの家へ行くからな」
16に続く
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