サラ金の親分2

その2)
「だから金を儲けることを第一目標としているのですね」
「当たり前だ。金がありさえすれば何でも買えるんじゃ。土地・建物・女・権力、金で買えんものは何もない」親分は自信あり気だった。
「そうでしょうか。永遠の命は金では買えませんよ」
「永遠の命など、そもそもないんじゃ。人間、死ねばお終いじゃ。死ぬまでいかに楽しむかが勝負なんじゃよ」
「私にとっては生きることも、死ぬことも同じように大事ですね。良い死に方をするのが良い生き方をした証しとなりますからね」
「武士道みたいな事をぬかしよるな。今は刀で殺される世の中じゃないんだ。死ぬのは年取ってから考えれば良いことじゃ。おぬしは若いくせに辛気臭いことを考えとるんやな」親分は苦虫を噛み潰したような顔をした。
「常に死ぬことを念頭に置かなければ充実した生は生きられないと思いますがね。これも価値観の違いなんでしょうかね」Qも強情だった。
「全く、おぬしとはソリが合わんの。できれば会わずにいたかったものじゃが、最後にイエスという人間がおぬしに何をしてくれたか教えてくれんかの」親分もQと議論するのは諦めたようだった。
「イエス様は私のために十字架にかかって下さいました。その死により、私は一切の罪から解放され自由になったのです。そして神様と直接に話すことができるようになりました」Qは満足げな様子であった。
「あんたは何のきっかけでそうした確信を得るようになったんだね」親分はQの様子に興味を持ったようだった。
「私も初めは疑っていました。今でさえも疑いの誘惑に襲われることはあります」
「いや、わしが聞きたいのはおぬしの確信の根拠じゃよ」親分はせっかちそうに口を挟んだ。
「確信は日々の生活の中で実証されています。困難に襲われた時にもじっと耐えれば神様から助けが得られます。そして常に感謝の気持ちを伝えれば神様は必ず良い結果をもたらしてくれます。そうした日々の積み重ねにより神様が私の助け主であることを確信できるのです」
「そうか、日々の積み重ねか。とすると一挙に神との結び付きが確立した訳ではないのだな」
「はい、違います。神様との間のバリアーが消えたのは一瞬の出来事でしたが、神様がいつもそばにいるとの確信は徐々に強まるものです。ですから私は自分が完成したクリスチャンとは思ってもいません。発展途上のクリスチャンに過ぎないのです。神様の存在は確実に信じられますが、イエス様の教えについては100%受け入れているかどうかの自信はないのです」Qは謙虚に自分の不完全さを認めていた。
「そうか、おぬしも悩みながら耶蘇の道を歩いておるんじゃなあ。ところでイエスの教えは何に書かれておるんじゃ」親分は少し興味を覚えて来たようだった。
「イエス様の言動はすべて聖書という書物に書かれています」
「あの分厚い本か」親分も店頭で見かけたことは憶えていた。
「ええ、でもイエス様の言動が書かれているのは後半の福音書というところだけです。4人の弟子たちによって書かれたものなので、それぞれ書き方に特徴があります。私はそれが人間の言葉によって書かれた書物である以上、必ずそこには誤解や曲解はあると思うのです。従って私は聖書に対してさえも100%の信頼を寄せる訳ではないのです」
「その点ではわしもあんたの考えに同調するよ。でもあんたの信仰も軟弱に見えるの。普通、信仰とは熱い心でイワシの頭まで信ずるものじゃないのかい」親分にはQの限界が見えたようだった。
「ですから私の信仰は発展途上なのです。100%の信仰を目指して毎日、悩み苦しんでいるのです」Qにも翳りが見えた。
3に続く

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