怒り変換機 最終回

最終回)
「はあ、組合がボーナス闘争をした時に彼の時代錯誤的な考えを伝え聞きました。彼の考えによるとボーナスは給与とは違い、収入に直結した報償給として捉えられていたのです。だから夏のボーナス回答も2ヶ月の要求に対して平気で1.5ヶ月という数字を出して来たのです。僕はその時点で彼はズレてると直感しました」
「そうですよねえ。病院は儲けを優先する会社組織とは違いますものねえ。売上げだけでボーナスを算定するのは無理があると思いますわ」
「僕は病院と言う組織ではボーナスも生活給の一環として捉えています。それでないと月々の生活が成り立ちません。毎月の家計の赤字をボーナスで埋めているような情況ですからね」
「AさんのU事務長に対する不満は今後も尽きませんね。彼と個人的に話されたことはありますか」
「いや、殆どありません。僕は彼と話す話題がありません。彼も僕に個人的に話しかけて来るような人の良さがありません。全く取りつく島がない感じなのです」
「そうしますと先程、K医師の解析に適用したICチップは使えないですね。Uさんの個人情報が少な過ぎます。今回は性格分析ICチップを使うことにしましょう」
心理士は新たなチップを変換器横のソケットに差し込んだ。そして画像を事務連絡会の最中にまで戻した。U事務長は口角泡を飛ばし、興奮気味にホスピス献金の不当な使用法を糾弾しながらも、Tセンター長には事前に相談していなかった言い訳を盛んにしていた。
「彼の言動で不自然な点をICチップがキャッチしました。糾弾している相手が不在と表示されています。抗議する相手が目の前にいないのに興奮する性格が解析されました」
「どのような性格結果が出たんですか」A氏も興味深く画面を覗き込んだ。そこにはこう表示されていた。
{抗議する相手が不在にも拘らず興奮するのは、過去に遡って相手と自分を責めていることに他ならない。彼の外見は強碗そうに見えるが、内心は臆病なり。鼻の下のちょび髭は単なる見掛け倒しに過ぎず。彼は過去、S医師に徹底的にやり込められた節あり。今回はその鬱憤を当事者のA氏にぶつけたものと思われる。正攻法で攻撃すれば陥落はやすし}
補足) 
{Tセンター長の名前を出し、自分を責めたる事はT氏に対し非があった事を認めるもの。つまりU氏は位が下のT氏に対しても頭が上がらない立場を如実に示す。この事実はU氏の小心さと姑息さを相示す}

後日談)
結果的にハンディーエコーは購入されることになった。誰もホスピスのS医師には逆らえなかった。U事務長もホスピス献金の使用に批判的ではあったが、最終的にはS医師に従わざるを得なかった。T事務長も大きな流れには逆らうことはなかった。

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